あの人の秘密

お風呂から上がると、バリケードさんはいつもコーラを飲む。私が何本か買っておいたビンの蓋を指でたやすく開き、ぐいっとひと口。それだけで半分が減ってしまうのだ。「体に悪いですよ」シャンプーとリンスを洗い流した水をタオルで拭いながらリビングに行くと、バリケードさんが彼女が買ってきてくれた寝巻を着てテレビを見ていた。私のものより大きいそれを着ているその人の足はテーブルに。そしてその足先には空ビンが三本ほど。

「体に悪いですよ」
「あ?」
「コーラ」
「へえ」
「歯がぼろぼろになっちゃうんですよ」
「俺はならない」
「いずれなっちゃいます」
「…うるせえ」

ふいっとすねたように視線をテレビへ向きなおすバリケードさんからは、お風呂上がりのにおいがまだ残っている。機械なのに入って大丈夫なのかな、という心配をしていたけれど、「お前ら虫けらが使う原始的なものと一緒にするな」と怪訝に眉を顰められて言われたので、大丈夫なのだと知った。
バリケードさんは、どこからきたんだろう。同じようにテレビに目を向けながらぼんやり考える。いまの機械を原始的なものと言ったから、もしや 未来から来たのだろうか。けれどもタイムマシーンが開発されたというニュースは小耳にもはさんでいない。美人アナウンサーさんが、最近起きた謎の事件について解説をしている。人気のない大陸に、隕石らしきものが落ちたかもしれないというものだ。けれども隕石にしては被害がそこまで出ていないし、クレーターもない。まったく不思議なものです。「エイリアンが来襲してきたのでは?」アナウンサーさんが解説者の人に首を傾ける。解説者の人はけらけらと笑った。「そんなのは低い可能性でしかありません。第一エイリアンなど ばちんっ。
テレビの画面ががしゃんと割れている。隣を見れば、キャノンに変形させた腕をテレビに差し向けているバリケードさん。「虫けらが」舌打ちをするのと同じようなニュアンスで呟くと、バリケードさんはソファから立ち上がって「寝る」とひと言。ソファに寝かせるわけにもいかないので、彼は私のベットで一緒に寝てもらっているのだ。ついでに私も寝てしまおう。そう思って、よっこいせと立ち上がる。部屋から出る直前、電気を消そうとしたときに見えた液晶の割れたテレビになぜだか怖さを感じて、私はすぐに電気のスイッチをオフにした。ぱちん。

(110814)



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -