淡い香りと、凛と咲く一輪の花。それに似合わない姿の一人の女性。

彼女は一人、草原を歩く。
一輪の花を持って。







「…久しぶり…。」




草原の中、白のワンピースにサンダル と、比較的楽な格好をした女性。
彼女は風に絡まる髪を押さえ、ある場所で立ち止まる。

前にはひとつの墓石。





「……君は」



「変わんないね…。」







小さく呟いた彼女は、手にした一輪の花を墓石の前に置いた。





「この花、好きだったでしょ…?持ってきた。」


柔らかな風に、なびくスカートを押さえるように、墓石の前にストンとしゃがみ込む。




「皆は、相変わらず元気だよ。バカみたいに!……君に、よろしくって言っといてってさ。」



「ね。」




その言葉と同時に、微笑んでいた彼女から笑顔が消えた。





静かに。





頬を、ひとつの雫が伝う。





「………っ……なんでっ………」



絞り出したような声で呟いた。





ダンッ―



彼女は、強く、強く、地面の墓標を殴った。






だが、次には、彼女の顔は晴れ晴れとしていて、

一人、青空を見上げていた。







(君には、青空がよく似合う。)










声にならないような声で。



墓石の前には、
一輪の、大輪の向日葵が置いてあった。




‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
はい。死ネタ…?になるのかな。
誰でもいけると思うので決めつけはしてないですが、私の中ではハル(女性)×葵(故人)ですね。葵が逝ってしまったお話で。

この時の女性(ハル)は、25くらいが目安。大人になった。ハルです。





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