「あの人も………いる…のかな…」


あの人――篠原怜音。



と、鈴木先生を眺めているところで後ろから急に声をかけられる。


「たーつみっ！」


「わっ！！………って…何だ、会長か…」


「え、何だって何？」


「別に…」


後ろには、昔とは少し変わった会長が立っていた。

つい先程まで思い出してたことを、会長に聞いてみることにした。


「……会長…覚えてるか？」


「何が？」


「…ほら、あそこ。鈴木先生がいるだろ？…あの人がいるんじゃないかと思って……」


「……あぁ…」


「……会長…僕、あのまま真里亞には何も言えなかった。逃げたんだ。現実から、自分の痛みから。」


「………」


「……本当は、思ってた。あんなやつら…引き離してやれば良いって……」


「……うん…」


「それを……会長がしてくれて嬉しかったんだ…！でも…でも…！…僕は真里亞の味方にならなきゃいけないから……会長に…奴当たりをしてた…」


「……あのね……俺、さっき真里亞に会ったんだ」


「……え…」


会長の急な話に戸惑う。


「会った‥のか？……真里亞に…」


「うん。ちょっと意地悪しちゃったんだけど、真里亞ってば顔真っ赤でさ………何だかもう、それだけで嬉しくて…」


会長は優しく微笑んでいた。


「…だから…もう、満足だって…？」



「…俺はもう良いよ……たとえ本人に好きだって言えなくても、俺は吹っ切れる。」



「………」


ふざけるな。



あの時の会長はどこに行ったんだ？僕は、こんな会長よりも昔の会長の方が良かった。


平気な顔で酷いことをする会長が


自分の代わりにあいつを痛め付けてくれるから。

僕は横で見物してるだけで済んだから。

何にも手を染めずに済んだから。


僕は――――…




「……辰巳？」



「……もう…いい……」



「……旦‥那…？」



突然の聞き覚えのある声に、まさかと思いながら顔を上げた。


目の前にいたのは――








―――真里亞








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