「……いやさ、俺も噂だけだと思ってたんだ。……いや、自分に言い聞かせてたって言うのかな。ハハッ」



会長は自嘲気味に笑い、話を続ける。


「でも…さ、見ちゃったんだよね。真里亞とあの方が抱き合ってるところ。」



「なっ……！…で、でも！あの二人はまだ想いも繋がっていない！抱き合ってるなんて…何かの事故じゃ……！？」


会長は僕の言葉に優しく笑った。


「うん。俺もそう思った。……でもさ、その時の二人の顔見たら………許せなくなった。」



とたんに、また先程の恐ろしい表情になった。



「……まさか……それで…？」




震える声で問う。

――返ってくる答えは、決まっている。



「……そうだよ？あのままにしてたら絶対くっついちゃうからさ。それは何としてでも食い止めなくちゃと思ってね。…まぁ何か知らないけどあの二人、最近は喧嘩か何かしてたみたいだけど…」


「………」


「関係ないよ。そんなこと。準備が整うのにちょっと時間がかかったけど、もう出来たし。丁度良かったのかな？」



クスクスと笑う会長。





まるで――悪魔のよう――






「……信じられない…」



「？……何が？」



「会長様が……そんなこと…」



「'するはずがない'？」




「……っ」



「何を言ってんだかな……君も思わないの？」



会長は僕の目を強い眼差しで見つめる。



「……あんなやつとくっつくくらいなら、いっそ……って」







―――――思った。



本当は、思っていた。



あんなやつの何処が良いんだ

あんな、真里亞を悲しませるだけの


あんなやつの、何処が………



こんなに苦しむなら、いっそのこと、あいつを殺してしまおうか。






何故そんなこと？





そんなの、決まってる。



「思ったこと…あるだろう？………君も、真里亞を想っていたのだから」








「…………」



「……これでもう俺からの話は何もないよ。君が真里亞に言うか言わないかは自由。」




「………言う…」




「へぇ……言えるの？」




「……言う……はずがない…だろ…」



「………そうだね…」



僕は、その言葉を聞きそのまま部屋を出た。


真里亞には何も言えず、そのまま留学してしまった。



―――――――…‥
そして、現在に至る。



「………あんなこと…皆に話せる訳がない。」



僕は一人で歩いていると、目の前に見覚えのある人物を見かけた。



「……あれは…鈴木…先生…？」



鈴木先生――あの先生がいるってことは…



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