新学期が始まる朝。 一人の少女が寮から学園へと足を運ぶ。 「ったく…。何でちょっとの時間しかしないのに出席しなきゃなんないんだか…」 ぶつぶつ言いながら歩を進める少女――ハルは、少し前に見覚えのある後ろ姿を見つける。 「あ、悠美と菜月ちゃんだ」 ハルはその辺に落ちていた小さな石ころを拾い上げ、悠美の背中をめがけて投げた。 石ころはハルが思った通りに弧を描き、悠美の背中へと突撃した。 コンッ 「痛っ!」 悠美はその言葉と同時にハルに気づく。 「気づいた?」 「おっ前……'気づいた?'じゃないわ…。まぁいつものことやけど…」 「あはは!オカンはやっぱアホやなぁ」 「う、うるさいわ!お前に言われたない!」 悠美は菜月にギャアギャアと反論するが、菜月は『はいはい』と聞き流している。 ハルはそんな二人を横目に、また前に見覚えのある後ろ姿を見つけた。 「……ねぇ、あれ」 ハルは悠美の肩をとんとんと叩き、前の背中を指差す。 「ん?って…あれ、真里亞と辰巳やん!」 「え?あ、ほんまや」 悠美の言葉を聞き、菜月もそちらを見る。 「…相変わらず、辰巳は携帯見てて真里亞はお菓子食べてるね。」 「ほんまや…ほんま三年なっても全然変わらんなぁ」 しみじみと話す菜月に、悠美が笑いながら水をさす 「自分もやろ(笑)」 「そうゆう自分もね。」 「ってゆうハルちゃんもな(笑)」 ハルは前を歩いている真里亞と辰巳に声をかけ、学園まで五人で歩いた。 私立腐女子学園 新学期 「……それにしても桜…満開だね…」 [*前] | [次#] [戻る] |