横で辰巳が二人を凝視していると、葵が辰巳の方を見ずに話しかけた。


「何か言いたそうだね。どうかした?」


「あれでしょ。何でハルは葵を助けたのかって…」


辰巳はビクッとなるが、コクリと頭を縦にふった。


「これは…まぁ…昔からのしきたりってゆうか……んー」


「しきたり?」


ハルは頭を傾げながら話す。


「うん……何か昔から『せんこー』ってゆう単語が入ってきたらお互い助け合うってゆうしきたりがあるんだよね……。」


「そうそう。だから次ハルがせんこーのことで困ってたら俺もハルを助けるって訳。」


「それにもう葵の存在皆にバレたし。いじめる必要ないんだよ…。」


ハルと葵の言葉に何となく納得した(丸め込まれたともゆう)辰巳は、次の疑問に移る。


「じゃあ、葵さん。また何で髪型変わってるんですか……」


「ん?……あー…これ?」


そう。葵の髪型はいつも会うたびに変わるのだが、今回は黒髪ロング。少しウェーブがかかっている。


「…前までは赤髪で長さは胸の辺りまででしたよね?…会う旅に髪型だけが変わってるならセットしたって思えますが…」


さすがに髪色も長さまでもこれだけ変われば、おかしくはないだろうか。
顔も声も同じな同一人物が二人いるとしか考えられない。


辰巳がその意の言葉を話そうとすると、葵が先に答えを言い放った。


「だってあれウィッグだもん。」


「………は?」


「…いや、『………は?』じゃなくて、あれはウィッグなんだよ。だから髪の長さも色も変わったの。」


辰巳は言葉が出なかった。


「……辰巳…何でも深く考えすぎだよ。葵が二人いるとか考えたの…?」


「…え、あぁ…うん」


辰巳は真っ白になりながらハルに力ない返事をする。

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