ハルは葵がにこやかに見送る姿を不思議に思いながらも、辰巳の手を引き職員室を後にした。



「……葵さん…ついてこないんだな…」


「ん…あぁ…うん。まぁ、最初から別にそうゆう気はなかったんじゃないかな…」


「え?」


ハルの言葉に辰巳はハテナを浮かべた。


「……いや、もとから迎えに行くとかそんな気は無かったんだろうなぁって」


「な…なんで?」


「だって、職員室に居たじゃん。先生に何か用事とかあったんでしょ」


「んー…でもそれだけじゃ…ちょっと…」


「…ま、ここまで来てない時点で本気じゃなかったことは確実でしょ?あと葵にはハルにそこまでの執着心はないよ」


「どうゆうことだ?」


「んー…話せば長くなるんだけどさぁ…」


ハルは寮へと向かう道を歩きながら辰巳に少し前の話を始めた


―――約2年前

小学6年生のハルと葵は学校帰りの道を二人で歩いていた。


「ねぇ、ハル。」


「んー…なに…葵」


「ハル…お前、中学違うとこ行くってほんと?」


「……まぁ…ほんとだけど…」



「あっ……そ…」


6年生の二人だが、季節はもう冬のど真ん中。卒業まであと3ヶ月と言ったところか。

もうすぐクリスマスと言うリア充達の為のイベントがある為、町にはクリスマスを意識した装飾が至る所に飾ってある。
そんな町中を歩きながら、ハルはポツリポツリと話した。


「……そこ、寮があるんだよね。そんなに勉強とか…難しい学校じゃないみたいだし……中学だけじゃなくて高校・大学とまであるんだ。」


「……へぇ」


「…もう試験は受けた。合格もしたよ…。」


「まじでか。やったじゃん」


葵はにっこりと笑って見せる。
ハルはそんな笑顔に胸を痛めた。


「ありがと……。秘密にしてて……ごめん」


「いいよ。言えなかったんだろ?」


「…………」


ハルは無言で頷いた。

そんなハルを見て、少し葵は悲しそうに微笑む。

「……やっぱ…さ。早く…あの家から出ていきたいのか?」


「ん……」

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