ハルと辰巳は教室をあとにし、職員室へと向かった。


ガラガラ―


「失礼しまーす…跡部先生いませんか」


職員室にはほとんどの教員が残っていた。
辰巳が戸を開けると共に後ろのハルが教員達に声をかける。


と、一人の生徒がハル達に気づく。


「ん?あ、おー!ハルじゃん!どしたの?こんなとこで会うのって運命じゃない?」


「あ…葵……何でお前がここに…」


「えっ…葵…さん?」



その生徒はつい先ほどまでメールをしていた葵。朝に会った時とは髪型が変わっていた為、辰巳には分からなかったようだ


「いやー、今日体育館で落とし物しちゃってさ。ハル迎えに行くついでに取りに来たんだ」


「……死ねよ……」


「ん?今なんか言った?」


「いや何も…」



葵は「ふーん…」と言うと何かを思いついたようにハルの方を見る。


「……なに?」


「あのさ、ハル。俺は教室で待っててって言ったよね?」


「……何のことやら…?」


ハルは内心ギクリとしながらもとぼけて見せる。


「とぼけても無駄だよ?分かってるから。どうせ逃げようとでも思ってたんでしょ?残念、どうやら俺のほうが一枚上手だったみたい」


「…う…うるさい…」


「あ、ところでさ。辰巳ちゃん今から一緒に遊ばない?デートデート!」


葵はハルが言い返せないのをいいことに、辰巳にデートの誘いを申し込む。


だが、


「すみません、僕は今日は帰ってしなきゃいけないことがあるので。また誘って下さい」



あっけなく断られてしまった。


「えー……まぁ…仕方ないか……あ、あと敬語やめてってば!」


「あ…すみません……でも僕はこっちのほうが話やすいので」



辰巳はキッパリそう言うと、ハルのもとにかけより「帰ろう」と促した。

ハル的には事よく進んで嬉しかったのだが、少しだけ葵の様子が気になる。



――辰巳に突っかかる理由が知りたい


「…ま、代々は分かってるんだけどね…」


「ん?何か言ったか?」


「何も?」


「……そうか」

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