辰巳は職員室へと足を向けた。
後ろから悠美が声をかける。


「おー。じゃあ放送室の前で待っとくでー」


「あぁ、鍵取ってすぐ行く」


たたたたっ――…



「足、速っ…」


「おっ、何やうらやましいんか?」


ハルは悠美の隣で辰巳の後ろ姿を見送る。


「別に…辰巳ってあんなに足速かったっけなと思って」


「お前がよう授業サボってた間に速なってんで」


「そんなバカな」



「ははっ、嘘や!」


「分かってるし。」


ハルと悠美は放送室に向かう。
続いて後ろから真里亞と菜月も一緒に向かった。

放送室の前に着くと、少しして直ぐに辰巳が来た。


「はぁ…はぁっ……か、鍵…持ってきたぞ」


「ん。お疲れ」


悠美は辰巳から鍵を受け取り、放送室の鍵を開ける。



ガチャ―…


「おおーっ!何か涼しいんだけど気のせい?」


「ほんまや!思いっきりクーラーついてへんか?!」


放送室の中は思ったよりも快適で、春の気温で丁度よい外の空気よりも少し冷えていた。

と、急に悠美が仁王立ちをして、口を開く。


「そやで!うちがこの前来た時タイマーしててん」


「そんな機能の良すぎるクーラーがあってたまるか。」


ハルは悠美の言葉を聞き、即答えた。


「なっ…何でやねん!」


「それはこっちの台詞だよ…。そんな…入学式から一週間くらい経ってんのに、クーラーが作動するわけないでしょ…」


ハルは『やれやれ』と大袈裟な態度を取り、悠美を挑発する。
悠美はその挑発に乗りギャアギャアとハルに言葉を返すも、ハルは鼻で笑う。

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