「ガイくんのお嫁さん可愛いわねぇ」

「フジというんだ」


ウメコの息子の嫁、ミゾレは二人と同じテーブルに付いていた。
餡蜜を口に運びながら、フジはもやもやとした気持ちのまま二人の話を聞いている。
ガイ先生は自分の旦那様なのに。
同級生である二人の話は聞いていて面白くはあったが、内容にはついていけなかった。


「フジちゃんはガイくんのどこに惹かれたの?」

「……え、あ、何ですか?」


ぼうっとしていて、話が自分に振られていたことに気づけずに反応する。
ミゾレは一つため息をついて、少し眉をしかめた。気に入らない。そんな顔をしている。
フジはほうじ茶を飲んで、からからに乾いた喉を潤す。


「フジは久し振りの外出で疲れてるんだ。また今度ゆっくりな」


そう言ってガイ先生が立ち上がる。そっと肩に手を乗せられる。
車椅子を押されて、甘味処ウメコを後にした。
人がまばらになり始めた通りを歩きながら、ふとガイ先生が口を開く。


「すまんな、久々の外出なのに」

「ガイさんが悪い訳じゃないわ…ただ」


その後を言おうとして止めた。
焼きもちを焼いていたなんて、言えない。
困らせてしまう。
秋の風がフジの頬を撫でていく。
家につくと、車椅子からフジを抱き上げたガイ先生はそのままソファに座った。
必然的に密着する形になって、鼓動が一気に早くなる。


「ガイ、さん?」


何も言わずにフジをぎゅぅっと抱き締めるガイ先生に戸惑いを隠しきれなかった。
背中を撫でられて、フジも抱きつく。
この人がたまらなく好きだ。
他の人を見ないで欲しいと思うくらいには、好きだ。


「ガイさん、どうしたの…?」

「すまなかった、フジ…」


大きな身体に包まれて、とても安心する。
謝罪の言葉も、優しさも全部受け止めてフジは彼と共に生きていく。


幼妻ちゃんとやきもち - 2


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