テンテンが帰った後、フジはうつらうつらとしながらガイ先生の帰りを待っていた。
彼の帰りはいつも遅い。
だが、待っているのは妻の役目だと母はいつも言っていた。
フジの父は多忙を極めている人で、任務でいなかったり担当になった下忍の面倒を見ていたりしていたことを知っている。
そんな父の背中を見て、フジは忍になろうと思ったのだから。
「フジ、今戻った」
「お帰りなさい、ガイさん」
頭上から降ってきた優しい声に夫が帰ってきたことを知る。
外に出れば、ガイ先生と慕われる彼は本当に素敵な人だ。
どれだけカッコ悪い、と周りに言われても己を変えることは絶対になかった。
両手を伸ばして抱擁をせがむ。
それに気づいたガイ先生はそっとフジを自分の方に抱き寄せた。
ほんの数時間離れていただけなのに、ガイ先生の体温がとても嬉しくて背中に腕を回す。
がっしりと筋肉のついた身体に古傷がいくつも付いていることをフジは知っている。
それは彼が戦ってきた証、ひいては彼が生きてきた証でもある。
くるくるとしたフジの髪を愛おしそうに指を通して、申し訳なさそうに笑った。
「すまんな、いつもお前を一人にさせてしまう」
「気にしないで。貴方が頑張ってることはよく分かってるつもりよ」
物分かりの良い妻でいなくては。
そう思っていたことが肥えに出てしまっていた気がする。
暗号部の仕事がない時は家に一人でいることが多い。
本当は寂しい。
「今度の休みにリー達も誘ってメシにいこうと思ってるんだが……その、だからな…お前も一緒にどうかとテンテンから言われたんだ」
「テンテンが…」
嬉しい申し出に思わず頬が綻ぶ。
迷わずにこくりと頷く。
優しい友人を持ったものだ。
この人の妻で良かった、と改めて思う。
幼妻ちゃんと旦那様
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