ようやく厳しい暑さも落ち着いてきて、心地良い秋の風が吹き始める頃。
ガイ先生の家をテンテンが訪ねてきた。
「フジ、来たわよ」
「テンテン、来てくれたのね。ありがとう」
テンテンを出迎えたのはサクラやナルトの同期であったフジだった。
穏やかな笑顔が印象的なフジは一年ほど前に戦闘によって右足を失った。
現在は戦闘はできないものの、暗号部に所属して日々暗号の解読に励んでいる。
何より周囲を驚かせたのはそれではなかった。
フジがテンテンの担当上忍のガイ先生の妻であることだ。
「今日は何のお茶?」
「今日は温かい玄米茶にしてみたの、涼しくなってきているし…」
ふふ、と笑ったフジは台所でゆるく湯気を上げているやかんを取りに向かった。
足を失っても忍でなくなっても、フジはフジのままだった。
穏やかで優しくて、静かに微笑んでいる。
テンテンは買ってきたお団子と中華まんを急須と湯飲みが乗っているテーブルに並べて、やかんを運んでくるフジを見つめた。
確かにフジとガイ先生が結婚した時は驚いたけど、破れ鍋に綴じ蓋でいいんじゃないの。
そう言ったのはフジの友人の山中いのだ。
「フジ、やかん預かるわ」
「あ…ありがとう」
テンテンがやかんを受け取り、急須に注ぐ。
この急須はフジのお気に入りで、丸く、つるんとした形が可愛らしい。
湯飲みも同じ形で瑠璃色の地に帯状に金粉をまぶした美しいデザインをしていた。
湯飲みをガイ先生と見に行った時に一目で気に入り買ってきたのだとか。
低温でじっくり蒸らすと甘味が強くなる、と言われて蒸らしている間にテンテンはそういえば、と話を切り出した。
「第七班が戻ってきたみたいよ」
「じゃあ、みんな無事なのね?」
「えぇ」
頷いて見せるとフジは安心したように笑った。
自身が任務の最中にこうなってしまって以来、フジはとても臆病になった。
誰かが怪我をすることをひどく恐れている。
「良い匂い。そろそろ淹れるわ」
湯飲みに玄米茶を注ぎ、フジは一口飲んだ。
優しい味が口の中に広がって、思わずほう、と息が漏れた。
「テンテン、ガイさんはまたリーとの修行?」
「……えぇ。ガイ先生も少しは自覚して欲しいわよ。こーんなに健気な奥さんがいるのに、ねぇ?」
テーブルに両ひじを突いて、手を組んだ上に顎を乗せたテンテンがフジを見る。
それでもフジは穏やかに笑って、あの人らしいわ、と言っただけだった。
「相変わらず“青春!”って言ってるのね」
「変わらないわよ、フジが現役だった頃と何も変わってないわ」
テンテンはそう言ってお茶を飲んだ。
幼妻ちゃんとお茶会
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