その日、木ノ葉に初雪が降った。
布団から出たくないほど冷え込んだ朝、フジは窓の外が白く染まっているのを見て歓喜の声をあげた。


「ガイさん、ガイさん!!雪が降ったわ!」

「雪?……どうりで冷え込んだと思ったら」


すでに着替えていたガイ先生にフジは満面の笑みを向ける。雪が降った日は楽しい日になる。それは昔からそうで、足を失う前も一日中飽きもせずに外を眺めていた。
雪の結晶が日の光に照らされてきらきらと輝き、時間帯によって見せる表情が変わるのを見るのが何より楽しみなのだ。
今年の雪はいつもと少し違う。
ガイ先生と結婚して初めて見る初雪だから。
忍ではなくなって、結婚してから初めての冬。
愛しい人と見る雪はいつもよりきらめいていて、少し暖かく感じる。


「ガイさんと見る初めての雪ね」

「雪は珍しくないだろう」


フジの言葉にガイ先生は妻の肩に手を置いた。


「これからは春夏秋冬ずっと色んなものを見ていこう。お前が行けない場所にはオレが背負っていこう」

「ガイさんとなら行けないところなんてないわ」


フジはそう返す。
思ったことを口にすることは大切だと最近気づいたのだ。
フジの言葉はきっと嘘ではなくて、ガイ先生とならばどこまでも行ける気がする。
きっと誰も行ったことのないところにだって行ける。
今まで誰といても孤独しかなかったフジが、幸福を感じられるようになったのだから。
愛の力は偉大だ。
一生愛の人生よ、とサクラが言っていたが、間違っていないと思う。
愛は人生について回るものであって、それなしには生きていけないのだと感じた。


「フジ、すまんが今日から少し家を空ける」

「いいのよ、気にしないで。無事に帰ってきてね」


後ろから回された手に触れて、ぬくもりを覚えておこうと思う。
これが根性の別れになるかもしれないのだし、そうでなくても少し離れるのだから。
ガイ先生が任務に出るとき、フジは必ず見送る。
そして、必ず愛を伝えるのだ。


「愛してるわ、ガイさん」

「あぁ、オレもだ」


ありきたりな日々がいつまでも続くように祈るしかフジにはできないから。


幼妻ちゃんと初雪


もどる。