君そら 派生編 | ナノ
もしくはこんな未来も 1 (by かがわ)


こちらは、君そら過去編のIF話です。当サイトのオリジナル設定を過分に含みますので、くれぐれもご注意下さい。

※妖狐の里が滅んでいなければの話となります。155話までご覧いただいた後にお読みくださると分かり易い(?)と思います。

※ここでは夢主(名前変換可)は脇役となっております。

以上の無茶振りOKな方のみ、スクロール(↓)してやってください。なおこの企画は、いつもお世話になっているアキさんとのリレーとなります。アキさん、ありがとう!











* * *



 お前も少しは女らしくしたらどうだ。そう、父さんが言い出したのが始まりだった。姉さんの勧めもあって、先日から里の巫女様のところに舞を習いに来ているが、どうもあたしには向いていないと思う。


「そこで一旦止まって。そうよ、いいわね。あとはもう少し指先の角度を……」


 動きは真似出来る。しかしそれだけではダメらしく、指先にまで感情を込めて滑らかに。と言われてもピンと来ない。ガサツだと言われているのだろうか。

 姉さんならもっと上手く出来るだろう。優雅な所作で父さんを訪ねてくるお客にお茶を出す姿を思い描く。あたしに比べると姉さんはとても女らしい。色白の美人、というのもあるが、気配り上手で、落ち着いて、包容力があって……何より大人だ。

 きっと姉さんが兄弟の中で誰よりも大人なのは、母さんを早くに亡くしたせいだろう。長女である自分がしっかりしなければと、あたし達下の兄弟の面倒と、里長である父さんを助けてきたのだ。

 そんな姉さんこそ誰よりも幸せになるべきだと思うのに、彼女はあたし達の幸せが見たい、はやく恋人の一人でも連れておいでと笑う。

 恋人、という言葉で思い出した。

 先日一番下の弟が、兄さんと一緒に父さんの名代で闘神の国まで行って帰って来た時のこと。彼はそこで幼馴染の女の子と再会したそうだ。しかしそれ以上は何も言わず、赤い顔をしたまま自室へ逃げてしまった。

 兄さんは「アイツにも春が来たのかもな」とだけ言って笑っていた。

 その女の子というのが。


「先生、今度先生の娘さんが帰ってくるんでしたっけ?」

「ええ、そうなの。行儀見習いを終えてやっと帰ってくるのよ。もう嬉しくて」


 次代の巫女としての見聞を広めてくるという意味合いも兼ねて、舞の師である玉藻様の娘が闘神の国へ行ったのは、彼女がまだ幼い時分だった。かれこれ80年ほど前になるだろうか。

 下の弟に比べると歳が離れていたあたしはあまり面識が無かったが、先生に似た綺麗な子だったように思う。


「瑞穂ったら、随分楽しそうね」


 先生は不思議そうな顔をして首を傾げている。


「はい、とても」


 面白そうな事になりそうだ。いつもポーカーフェイスを気取る生意気な弟の顔を思い浮かべて、つい笑ってしまった。
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