中編・王様の耳はロバの耳 | ナノ
王様の耳はロバの耳 11


――こんにちは、弥美ちゃん。そっちの生活はどう? 楽しんでくれてる?

――誰? はじめて会いますよね?

――やっだなー。忘れちゃったの? 僕、神様だよ。

――真面目に話す気がないならお引き取りください。

――ちょっと冷たいんじゃなーい? せっかく会いに来たってのにさぁ。その喋り方も硬いよー? 肩の力を抜いて、もっとフレンドリーに行こうよー。

――うざっ! 勝手に肩でも何でも脱臼して帰りやがれ!

――ハハッ、相変わらずだね。ま、実はのんびりお喋りしている時間は無いんだ。そっちに、美少女補正の子と、最強補正の子と、逆ハー補正の子を送るから宜しくね。彼女達の本命はそれぞれ、幽助君と飛影君、それと蔵馬君だよ。

――はぁ? 急に現れてよく分からない事をベラベラと! もっと簡潔に、分かりやすく話せっつーの!!

――まったく、僕にそんな口を聞くなんて、怖いもの知らずだね。

――貴方が何者だろうと、人にモノを頼むのならそれ相応の態度ってのがあるでしょうが。見たところ良い歳した大人が、満足に説明のひとつも出来ないなんて情けない。貴方、働いたことある? あるなら、ホウレンソウって知ってる?

――えー? 今も働いてるんだけどなぁ。ホウレンソウって、確か報告・連絡・相談だったっけ?

――そうです。正しくは上司と部下との間で使うビジネス用語だけど、大事なのは人にモノを頼むなら、相手の都合を確認すること! そして、何より相手が理解できる言葉を使え!! 分からないなら、相談しなさい!!

――あんまり時間が無いんだけど……

――伝える気が無いなら知らん!

――あぁ! 分かった! 分かったよ、あのね……













 おにー様に言われて、私はあやめさんと二人で現場に駆けつけた。

 そこでは、今度はシアン色の髪をしたボーイッシュな格好の女の子が、飛影君と激しいバトルを繰り広げている。


「……あやめさーん」

「……はい」


 正直、凄すぎて(というより恐ろしくて)近づけません。


「どうしようか」

「どうしましょう……とりあえず、コエンマ様に報告して参ります」

「あーそうだね、お願いします」

「はい、では」


 おにー様と連絡を取るために離れたあやめさんを見送って、私は戦い続ける彼らから十分距離を取って、様子を見守ることにした。

 腰掛けるのに良さそうな場所を選んでいたら、一際大きな音が聞こえたので、顔を上げる。

 すると、女の子が綺麗に弧を描いて飛んでゆくではないか!


「えっ!? ちょっとヤバいんじゃない!?」


 いくらなんでもやり過ぎでしょ、飛影君!!!

 しかも、彼は私が女の子の元へ駆けつけている間に負けた相手のことなどもう興味ない、とばかりに去っていった。

 女の子は気を失っていただけなので、ホッと息を吐く。

 まぁ、殺さなかっただけマシ、と言えるかもしれないけど、ホント容赦ないヒトだな!!


「しょうがない、私が手当てしとくかぁ……」


 あやめさんが帰ってきたら、この事もおにー様に報告しなきゃだな。


++++


 彼女の傷の手当てを一通り終え、あやめさんが再びおにー様に報告へ行って間も無く。ようやくシアンの子が目を覚ました。


「痛っ……!!」

「そんな急に起きたらダメですって、傷に響きますよ」

「この傷の手当て……貴女がしてくれたの?」

「まぁ、一応。あまり上手じゃありませんが」

「ううん、ありがとう」

「いえいえ」


 私が笑顔をみせると、少し笑ってくれた彼女だったが、急に俯いてボロボロと涙を流し始めた。当然、私はビックリ仰天だ!


「どうしました!? 傷が痛い!?」

「違うの!! せっかく神様に戸愚呂(弟)レベルの最強設定にして貰ったのに、飛影に負けちゃったのが悔しいの!!!」

「は? 神様?」

「そう神様! モブの貴女に言っても分からないと思うけど、ずっと夢見てた幽白世界に来られたのよ! しかも神様から一つ補正を付けて貰える事になって、最強設定にして貰ったの!! 飛影と恋人になりたかったから!!」


 彼女の言葉を聞いて、私は今朝方見たよく分からない夢を思い出した。


――あのね、僕の手違いで君とは別の世界の三人の女の子に、お詫びをする事になったんだ。三人とも幽遊白書の世界へトリップを望んでいたからその通りにしたよ。

 それとは別に、一人一つずつ願いを叶えるサービス付きでね。

 一人は絶世の美少女に容姿を変え、一人は戦う力を与え、最後の一人は……この子は少々欲張りな子でね、チャームの魔法を、つまりこの子が狙った異性が自分に一目惚れする魔法の力が欲しいと願ったので、やむなく僕はその通りにしたんだ。約束は守らなくちゃならないからね。

 ……そんな可哀想なモノを見る目は止めてくれないかな。

 ともあれ、これから三人の女の子がそっちに行くけど、弥美ちゃんにはフォローを頼みたいんだ。彼女達がそっちで生きていくなら、それ相応の対応と、もし帰りたいと望むなら、強く願えば叶うと教えてあげて欲しい。

 だから!! そんな虫けらでも見る目は止めて!!

 一応、僕、神様なんだからぁぁぁぁあああ!!!!


「ちょっと! 聞いてるの!?」


 ハッ!! あんまりにもバカバカしい夢の内容だったので、意識が現実逃避を起こしかけていたよ!!


(じゃあ何!? あの阿呆みたいな話はマジだったの!? んな阿呆な!!)

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