ユリアシティ:04
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らしくない。と自分でも思った。 部下であるナツキを抱きしめ、子供をあやすように背中を叩く。 死霊使いとまで呼ばれたジェイドがこんなことをするとは……自分でも驚きだった。
一頻り泣き、涙が止まったのかそっとナツキが顔を上げた。 目が赤く腫れてしまっている。 あれだけ泣いたのだ。無理もない。
そっと手を伸ばし、目元に触れる。 くすぐったそうにナツキが目を細めた。
「腫れてしまっていますね」
「あ、あぁ……すぐ冷やすから問題はな――いえ、ありません……じぇ、ジェイド……大佐……」
おや、とジェイドは口元を上げた。 聞き間違いではない。頑なに自分の名を呼ばなかったナツキが確かに今"ジェイド"と言った。 照れているのかナツキはそっぽを向いて、失礼します!と一礼してばっと此処から出て行ってしまった。 思った以上に可愛い反応にジェイドはくすくすと笑いその後姿を見つめていた。
ナツキが去った後、ジェイドは暫くこの場にとどまった。 ナツキは自分が思っているよりもずっと色々と抱えているようだった。 特にキムラスカの話になると殺気立ったり、剣の柄に手をかけていたり。 過去にキムラスカ関連で何かあったのは明白だった。
(戦争、か……)
ジェイドはそこまで考えて、小さく息を吐き出した。 戦争で大切な者を失い憎しみを抱える者は沢山いる。 自分は大切な者がいなかったから憎しみなどなかった。あるのはただ無だった。 だからその気持ちが良く分からない。どれほど辛いのか、苦しいのか、哀しいのか。
ナツキの抱えている闇は一朝一夕で解決するものではない。 それに、ジェイドが口を出してどうにかなるものではない。
「困りましたねぇ……」
これ以上待たせるとアッシュが五月蝿そうだ。 ジェイドは息を吐き出し、緩く首を振るとゆっくりと歩き出した。
思ったとおり、アッシュは眉間に皺を寄せていた。
「遅い」
ジェイドの姿を認めると、不機嫌そうな表情のままそれだけ言うとさっさとタルタロスに乗り込んでしまった。 その後をナタリアがぱたぱたと追いかけていく。 やれやれ、と息を吐き出しつつ、ジェイドもまたタルタロスに乗り込んだ。
タルタロスの船橋にはすでにナツキ、ガイ、アニス、イオンがいた。 ナツキはジェイドが入ってきた事に気付き、駆け寄ってくる。
「じぇ、ジェイド大佐!」
名前を呼ぶ事が慣れないのか吃音しながらもナツキはジェイド、と呼んだ。 それが可笑しくてジェイドは小さく笑みを浮かべ、なんですか、と返す。
「タルタロスの走行機能に異常はありません。すぐ動かせます」
「そうですか……では、アッシュ、ガイ」
談笑していたガイとアッシュに声をかけ、タルタロスの操縦席に座るよう促す。 ナツキ、ガイ、アッシュが3つある操縦席に腰掛けた。
タルタロスの性能をフルで使うのならば4人だけでは無理なのだが、今は移動のみ。 4人だけでも十分事足りる。
「ねえ、セフィロトってあたし達の外殻大地を支えている柱なんだよね。それでどうやって上に上がるの?」
「セフィロトというのは星の音素が集中し、記憶粒子が吹き上げている場所です。この記憶粒子の吹き上げを人為的に強力にしたものが"セフィロトツリー"つまり柱です」
アニスの問いにイオンが簡単に答えた。 なるほど、とガイとナツキが納得したように小さく頷いた。
「一時的にセフィロトを活性化し吹き上げた記憶粒子をタルタロスの帆で受けます」
ジェイドが今回の作戦の説明する。 大丈夫でしょうか、とナタリアが不安そうに両手を祈るように組んだ。
万が一にも失敗すれば、タルタロスにいるジェイド達は今度こそ粉々になるだろう。
「心配するな。始めろ!」
アッシュの号令にすっと場の空気が変わった。
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