- ナノ -


ユリアシティ:01


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ティアの言ったとおり、どこまでも広がる瘴気の海にぽつんとそれはあった。
滝を越えユリアシティへとタルタロスを着けた。

ユリアシティは瘴気が入らないように譜術を施した硝子で覆われている。
頭上を見上げても硝子の向こうから入るのは太陽光ではなく薄暗い紫色をしていた。
視線を元の位置に戻し、ガイに背負われるナツキを見る。
真っ青な顔をしたナツキはガイの歩く振動すら辛いようだった。

ティアの案内ですぐに医者を用意してもらった。
ベッドに寝かされたナツキを見て医者は顔色を悪くしてすぐに治療に取り掛かった。
本当に危険な状態なようだった。

とりあえずここにいてもジェイドが出来る事はない。
どうせならばこれからの事をティアやユリアシティの市長と話すほうがいいだろう。
お願いします、と医者に声をかけジェイドは部屋を出た。

市長の家へと向かうと何故かアッシュとであった。

六神将である彼はどうやら此方の味方である事をジェイドはアクゼリュスで漸く知った。
アッシュこそが本当の"ルーク"であり、あちらのルークのオリジナルだった。
居場所を取られた"ルーク"は名前を変え六神将なった。そうなった経緯をジェイドは知らないが、何となくは予想がつく。
自分の発明したフォミクリーでこんな事をされたのは非常に腹立たしい。
いや、こんな技術を発明した自分にジェイドはどうしようもなく後悔していた。

アッシュはタルタロスを打ち上げるという事をジェイドに告げてさっさと踵を返してしまった。
どうもルークのオリジナルはずいぶんと性格が違うようだ。
普通ならば性格も似るはずなのだが……。生活環境が変わればこんな風に変わるものなのだろう。

具体的なことは殆どアッシュが聞きさっさとやってしまった。
アッシュはどうやら焦っているようだった。
無理もない。自分達がここにいる間もヴァンは動いている。
どうやらヴァンは外殻大地の人間を全て消そうとしているらしい。アッシュが言っていたから本当だろう。

タルタロスを外殻大地に戻す方法は簡単だ。
アクゼリュスを支えていたセフィロトツリーを刺激しそのツリーに持ち上げてもらい外殻大地に戻す。
しかし失敗すれば乗っている自分達もただでは済まされない。
崩落の衝撃を与えられれば今度はタルタロスも壊れてしまうだろう。

「軍人さん!」

「はい、なんですか?」

ぱたぱたとかけてきたのは先程ナツキを診ていた医者だ。
血相を変えてかけてきた医者にジェイドは不安を感じる。

ジェイドの前で止まり、乱れた息を整え医者は言った。

「いないんです!治療を終えて私が目を離した隙に……」

「いない?ナツキは目を覚ましたという事ですか?」

「そのようですが……一体何処に行ったのか……さっぱり」

医者は顔色を悪くしたまま肩を竦めた。
とてもじゃないが動けるような身体ではないだろう。
ナツキが何処に行ったのか、さっぱりわからない。

「わかりました。仲間に声をかけて探してみます」

ジェイドは医者に一礼をして、足早にナツキを探し始めた。

 



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