- ナノ -


再び旅立つ:04


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誰かに肩を揺すられ、ナツキは目を開けた。
まだ頭がぼんやりとする。

「ナツキ、動けますか?」

「……大佐」

何とか身体を起こし、額に置いていたタオルを取る。
ふむ、とジェイドがナツキの顔を覗き込んだ。

「先程よりはマシですね」

「はぁ……」

生返事を返し、ナツキはのろのろと長椅子から立ち上がった。
少し眩暈がしてふら付いたが、ジェイドが支えてくれたお陰で何とか倒れることはなかった。
慣れない事はするものではないな、とナツキは小さくため息をつく。

「グミ、ありますか?」

「えぇ、どうぞ」

差し出されたミックスグミを受け取り頬張る。
ミックス味のグミを咀嚼しながら、酒場を出た。
酒場の主人に挨拶することも忘れない。

「これからケセドニアですか?」

「いいえ、ザオ遺跡です。イオンがそこにいるようです」

ザオ遺跡。今から2000年程前に出来たといわれるあのザオ遺跡だろうか。
ここから東だそうですよ、とジェイドが説明を付け加える。
適当に相槌を打ち、仲間が集まっている井戸のようなところへ向かう。

「遅いぞ!お前ら!」

「悪いな、慣れない陽射しに体調を崩してしまったようだ」

チ、とルークは舌打ちをする。
全員が揃ったところで、早速東にあるらしいザオ遺跡に向かった。
当然、ルークの要望でナツキは音素を調節し気温を下げる。
ティアやナタリアは何度もナツキの心配をしてくれた。

ザオ遺跡は案外簡単に見つけることが出来た。
砂に少し埋もれていたが、特徴的な大きな瓦礫が飛び出している。
中は砂っぽいが涼しく、ナツキは音素の調節をやめた。

張り詰めていた意識を解いたせいでどっと疲れが出る。
静かに息を吐き出すと、大丈夫ですかとティアが尋ねてきた。

「まあ、何とかいけそうだよ」

小さく笑ってもティアは心配そうな顔をしていた。
また顔色の悪さが戻ってしまったのかもしれない。
異様なほどの寒気がする。

ポーチから取り出したオレンジグミを口に放り込んだ。
少しでも体力やTPを回復しなければ魔物に襲われた時に対処できない。

「ナツキ、辛いなら下がってた方がいいぞ」

前を歩いていたガイが歩調を緩めてナツキの隣にやってきた。
その顔もティアと同じく心配そうな色をしている。
ジェイドも何にも言わないがナツキのすぐ後ろにいるのは倒れたときに対処できるように、なのだろう。

入り組んだ遺跡内を進む。
途中、ミュウが第二音素の力を手に入れ、身の丈ほどの大きな岩を破壊するようになった。
あの小さな身体にどこからあんな力が出るのかと思う。いや、ソーサラーリングのお陰なのだろうが。

バットやスピリッツといった魔物が何度も襲い掛かってきたが難なく退け先へと進んだ。




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