どん、と目の前にいたウェスカーが腕を使って跳躍する。 行き先はシェバの元。
「目障りだ!」
腕を振り回し、シェバに距離を詰めていく。
「どこへ行っても争い……そして汚染……薄汚い人間、人間、人間……」
すでにウェスカーの怒りはクリスではなくなっていた。 人間そのものを憎んでいた。 ――どうして?何がウェスカーをそんなに苦しめたんだろう? 俺は頭の中で答えの無い質問をする。
「シェバ!持ちこたえてくれ!」
突然シェバのところの足場が崩れ、間一髪シェバは岩にしがみつくも自力であがるのは時間がかかりそうだ。 そうしている間にもウェスカーはシェバに向かって攻撃しようとしている。
手元を攻撃されてはシェバが溶岩に落ちてしまう。 菜月はガンホルダーに手を伸ばして、しっかりとハンドガンを握った。
「クリス!シェバのところに行って!俺がウェスカーを撃つ!」
ハンドガンでは荷が重いかもしれないが、きっと出来る。俺なら大丈夫。 自分に言い聞かせるように心の中で"大丈夫"と呟き、ハンドガンを構えてトリガーを引く。
タンタンタァン――
数十メートル向こうにいるウェスカーが呻いて、立ち止まる。 顔だけを後ろに向けてシェバとクリスの様子を確認した。 ちょうど、クリスがシェバを助けているところだった。
ほ、と息を吐き出して、俺はハンドガンを下ろす。
「傲慢なお前たちは裁かれなければならん!」
「黙れ!貴様にそんなことを言う資格は無い!」
噛み付くようにクリスが言い返した。 クリスたちが円形の高台に上ってくると同時に、ウェスカーがジャンプしてこちらに来る。
「クリィイス!!」
憎しみだけがウェスカーを動かしているような気がした。 怒り狂っているウェスカーは単調な動きをしていて、弱点を狙い撃つのはとても簡単だった。 だが、一撃一撃の攻撃が重くあたれば重傷になる。そんな攻撃を避けては攻撃の繰り返しは簡単なようで難しかった。
「ウェスカー!」
タン――
気を引き付けるように名前を呼び、発砲する。 案の定ウェスカーは此方を向き、弱点をクリスとシェバにさらけ出した。
そこへクリスとシェバがマシンガンとショットガンを撃ち込む。 ぐらりと揺れる身体。 弱点が前に移動したのを見て、俺はハンドガンをなおして駆け出した。 右拳に全力を込めて力いっぱい殴りつける。ぬるりとした液体が顔にはねた。 さっと離れて距離をとった。
ウェスカーが胸を押さえて呻く。
怯んだウェスカーにクリスが素早く羽交い締めをして、ツタを引っ張り弱点をさらけ出させた。
「今だ、シェバ!」
「わかったわ!」
シェバが追い討ちをかけるようにナイフで何度も何度もウェスカーの弱点を突き刺した。 止めを刺すように、勢いよくナイフを突き立てた。
ウェスカーはよろめきつつも腕でクリスを振り払い、シェバを潰そうと太い腕で掴みにかかる。
「そんな事させない!」
俺はウェスカーの背中に見える弱点に一直線に向かい、渾身の力で殴りつけた。 びちゃりと球体が陥没し、血ともいえない液体が飛び散った。
俺とシェバは同時にウェスカーから離れた。
ふら付きながらもウェスカーはまだ立ち上がる。 距離を取り、また攻撃を繰り出そうと手を振り上げたその時だった。 ウェスカーの立つ地面が割れた。 完全に不意を付かれたウェスカーが溶岩に沈んでいく。
「ぐああぁあああああ!!!」
苦しいのかウェスカーは悲鳴を上げる。 ウロボロスは火に弱い。熱々の溶岩なんてとんでもない苦痛だろう。
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