リーパーの死体を跨ぎ、ベルトコンベアーのところまで戻る。
電気の通ったベルトコンベアーのレバーを倒した。
緑色のランプが消え、代わりに赤色のランプが点灯する。
同時に、ベルトコンベアーがゆっくりと速度を上げ動き始めた。

流れてくるコンテナに注意しながら、ベルトコンベアーを走り抜ける。

「ひぃひぃ、そんなに早く走れないんですけどっ！！」

ベルトコンベアーの速度があり、なかなか前に進まない。
菜月の目の前でさきさき進んでいくクリスとシェバ。
と、そうこうしている内にまた前からコンテナが排出される。

コンテナに押されて行く先はめちゃくちゃ熱そうな焼却炉。

「いやぁああああ、コンテナのいてぇええっ！！！」

命からがら柵を越えて隣のベルトコンベアーに乗り換える。

ふに―――

「ぎゃぁああああ！！！何かふんだぁあああああ！！！！」

悲鳴を上げてその場から飛びのくと、血色の悪いがりがりにやせた人間がいた。
辛うじて生きているのか、ときおりビクっと痙攣するように動いている。
その気味の悪い人間は沢山いるのかどんどんと排出されて流れてくる。

菜月はビクビクしながらも、それを踏まないようにベルトコンベアーを走り抜けた。

汗ぐっしょりになってベルトコンベアーから上がる。
耐寒持久走するより、疲れた……。

「さぁ、いくぞ」

「……うぃ……」

少しも休憩を取らずに次の赤い扉を開けた。
誰か、みどぅぅううううう！！！！(水)


L字の廊下をぬけ、突き当りの扉を開ける。
そして、銃を構えながらクリス、シェバが中に入り、それに続いて俺が入った。

広い空間があり、辺りを警戒して見回す。

カシャン――

自動で閉まった扉にシェバが過剰に反応して、銃を向ける。
一瞬俺に向けられたと思って焦った……。
シェバは何も言わずに前を向き歩き出す。菜月もその後を追う。

周りのガラスの管の中には、液体が入っており黒いひも状の何かがぷかぷかと浮かんでいる。

奥に設置されている椅子に誰か知らない男性が座っていた。
俯いていて表情は分からない。

クリスとシェバがその男性にゆっくりと距離を縮めていく。
勿論銃は構えたまま。

「偉いわ、よくたどり着けたわね」

突如聞こえたエクセラの声に３人は一斉に辺りを見渡す。
案外簡単に見つけることができた。エクセラは隠れる気はさらさらないようだ。

安全そうな、此方からは手の出せない場所にエクセラがいた。

「エクセラ、ジルはどこだ！！？」

「ジル！ジル！ジル！ホントつまらない男。あの人の言ってたとおりね」

開口一番ジルの行方について聞くクリスに、呆れた表情でエクセラが言う。
いいじゃん、クリスはジルさんが好きなんでしょ！好きな人の居場所を聞いて何が悪い！！
俺はいつだって恋する男の味方さっ！ハハァーン！！←馬鹿

「ここまできたご褒美に、教えてあげる。ウロボロスがなんなのか知りたかったでしょ？」

エクセラが言い終えた瞬間、椅子に座っていた男性が立ち上がった。
俺たちは男に向かって降ろしていた銃を構えた。

男は俺たちが見ているうちにみるみると姿を変えていく。
ぼこぼこと皮膚が蠢き肩から触手が飛び出す。それを皮切りに体の至るところから触手が出てくる。
いったいどこにそんな大量の触手が入っていたのかと思うほどに。

「やっぱり新型のB.O.W.。こんなものをテロリストに！？」

「貧しい想像力ね」

エクセラはシェバを小ばかにするように鼻でせせら笑う。

「確かに"始祖ウイルス"ベースのB.O.W.だけど、これは売り物じゃないの」

「じゃあ、何だって言うんだ？」

今度はクリスがエクセラに噛み付く。
エクセラと話している間にも男の体の触手は増え、すでに頭部を残した体全てを包み込むほどになっていた。

ビクビクと痙攣したかと思うと突然触手が体の中にもどっていった。
いったい何が起こっているんだ……？
男の様子をじっくりと息をひそめながら見つめる。

「"賢者の石"そういえば分かるかしら？」

顔を上げた男の瞳が鋭くとがり紅に染まった。
危険を感じて俺は銃を構えながら、後退する。

「優れた遺伝子のみを選り分け、進化を促す」

男が俺たちに向かって歩みだす。

「私とあの人の夢の結晶、あの人の願いそのもの……」

「進化！？どういうことなの！」

先ほどから話に出てくる"あの人"というのは、ウェスカーのことなのだろうか？
二人よりも大きく距離をとりながら、菜月はエクセラを睨む。

「もう少ししたら嫌でも知る事になるわ、全人類がね」

そういうとエクセラはにやりと口元を上げた。
男がどんどんと足を速め、此方に間合いをつめてくる。

ボタ――

男の体から触手が落ちる。
刹那男は痙攣しながら空を仰ぐような体勢をとる。

「……残念」

エクセラが男を見て言った。
男は辛そうな表情を浮かべ、悶え、苦しむ。

「いいセン、いってた思ったんだけど……あの人の世界に住めるのは資格を持つものだけ……」

「……？」

一瞬エクセラと目があったような……。
それだけ言い残してエクセラは奥へと消えていった。
ついでに痙攣している男も残して。

「待て！エクセラ！」

見えなくなろうとしているエクセラに向かってクリスが叫ぶ。
しかし、その声は届かずにむなしく反響した。



prev ◎ next