リッカーβだらけの渡り廊下を抜けた場所は、工場のようなところだった。 真ん中のベルトコンベアーに運ばれるコンテナがまさしくそのイメージをかもし出してる。
梯子をスルーして飛び降りる二人。 あれ、5メートルぐらいあるよね?骨折しないのっ!!? 置いていかれてはたまらないので菜月は急いで梯子を降りていく。
「遅いわよ」
やっとの思いで下までたどり着いたのに、シェバに厳しいお言葉を受けた。 だって、だってだって、クリスとシェバの真似したら絶対俺の体が持たないんだもんっ!!
再び現れた銃を持つマジニを壁に隠れながら撃退していく。
カツン――
目の前に落ちてきた何かを、菜月は目で追う。 丸くて黒い―――
「うぉおおおおっ!??」
何かを確認する前にそれが強烈な光を発し、菜月の瞳を襲った。 真っ白に埋め尽くされた視界は擦っても何も見えない。
「目がぁあああああ!!目がぁあああああ!!!」
「あ!ナツキ、そっちは――!」
クリスが何か言っているが、自分の声にかき消されて何も分からない。 というか、いつまでみえねぇんだ、コレッ!! クリスがどこにいるのか確認しようと、手を伸ばす。
手に触れたクリスらしきものに、菜月は安堵するが何か変だ。 かすかに機能し始めた視界でそれをじっくり眺める。
「……」
「……」
「……」
「……ぎゃぁああああ!!!!」
てっきりクリスだと思っていたものは、クリスではなくスタンロッドを構えたマジニ。 赤い瞳がらんらんとして菜月を捕らえている。
菜月を狙って薙がれたスタンロッドをしゃがんで避ける。 逃げ遅れた髪の毛数本が、尊い犠牲になってしまった。 マジニを見ると二撃目を加えようと、スタンロッドを振り上げている。 これ以上攻撃をされるのはマズイ。
タァン――
菜月の耳元を掠めながら、銃弾がマジニの眉間を捉えた。 耳元を手で覆いながら菜月が振り向くと、シェバがハンドガンを手ににっこりと微笑んでいる。
「シェバさぁあああん!!!今俺の耳、後一歩間違えたらお陀仏するところだったんですけどぉおおお!!!!?」
「煩いわね、助けてやったんだから感謝しなさいよ」
全力で抗議する菜月に鋭い睨みをし、ドスのきいた声でシェバが言う。 そして、極め付きには真っ黒い笑み。俺とシェバの周りだけ温度が数度下がった気がする。
「おい、いくぞ!ってさっきから二人で何やっているんだ?」
何にも知らないクリスが不思議そうな顔をして此方を見る。 そのまま知らずにいたほうが、幸せだよ……クリス。 心の中でぼやいた筈なのにシェバが睨んできていた。
そんなことはさて置いて、ベルトコンベアーに乗る。 進行方向とは逆らうように進んでいく。 敵を倒すときベルトコンベアーの上に可燃性のガスボンベが所々においてあったため上手く銃を使えなかった。 下手をすると自分たちもろとも爆発に巻き込まれてしまう可能性があったからだ。
「難しいなぁ……」
「あら、こんなのこれで一発じゃない」
「ちょ――」
苦戦する菜月の横でシェバが徐に取り出したのは手榴弾。 止める間もなくシェバはピンを抜くと敵に向かって思い切り投げた。
ボォオオオン!!!
手榴弾の爆発に引火したガスボンベが更に大きな爆発を起こす。 爆風が此方まで届き顔を撫でる。 そんな爆発に巻き込まれて敵が生きている訳もなく、というかいた形跡も怪しいほど何にもなくなっていた。 クリスが顔を引きつらせやっとの思いで「いくか」とだけ口にした。
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