- ナノ -




置いていかれる前に、着いていくとオレンジ色の光線が部屋を横切るように光っている。

「これは……何かの仕掛けのようだな……」

光線を反射させている鏡みたいな岩、つーか石像というかなんか……装置を調べてクリスが言った。
俺も傍によって、装置から出る光線を眺めてみる。

なんだか、ものすごく熱気が……!!熱気が来るよ!!

身の危険を感じて菜月はすぐに光線から、距離を取る。

「シェバ、ナツキその光には気をつけろ、下手に触らないほうがいい」

「言われなくても」

光線が当たらなさそうな、ちょうど高台になっているところを見つけてそこによじ登る。
菜月の見つけた安全地帯に、シェバも一緒に乗る。

「よし、じゃあそこにいてくれ。俺が動かす」

クリスはそういうと装置を動かして、宝石のような物が埋め込まれた装置に光をぶつけた。
光の当たった装置は、小さな炎を上げる。

「正解みたいね」

俺たちは高台を下りると、光が当たった装置の周りに集まった。
ガコン――そんな音を立てて、俺たちの立っている部分だけが下の階におりていく。
文明の利器にほとほと驚かされながらも、俺たちを待っていたのは上の階と同じような装置たち。
今度は、少し難易度が上がっているのか複雑になっている。


用意されている高台にシェバとともに上がり、クリスが動かすのを眺める。
クリスは幾らか装置を動かした後、光を塞ぐ柱をけり倒した。

重たそうな柱を見事に倒すと、光が一気に通った。

同じようにエレベーターに乗り込み、下へ降りる。
さっきと同じ物があり、再びクリスが装置をちまちまと動かした。

2回もやれば、大体構造が理解できたようですいすいと動かす装置の元に走る。
菜月は暇なのでハンドガンに弾を詰めておく。

「さ、行くぞ」

手で弄んでいたハンドガンをホルダーになおして、俺はエレベーターに乗った。
俺たちはもっと地下に下りていった。


次下りてきた場所は、さっきみたいな装置はもうなかった。
代わりに怪しげな花がたくさんある空間にたどり着いた。

「気味ワリィ……」

オレンジ色の花びらは、目に見えるほどの花粉を飛ばしている。
それにしても、こんなにまがまがしい花なんて、初めて目にした。

「地下にこんな所があるなんて」

信じられないという風にシェバがクリスと顔をあわせた。

「見た事のない花だな…………あれは!?」

何かを見つけたクリスがそれに駆け寄った。
クリスが見つけたのはとても古ぼけた物だった。

クリスは表面についた汚れを手で取り払うと、書かれていたマークを見る。

「アンブレラ!?」

「え?」

クリスの言葉に、シェバが聞き返した。
……俺だけ、話についていけないよぉ……アンブレラって何!?傘ですかっ!!
ひとり的外れなことを考えながらも、二人の会話に耳を傾ける。

「どうして、アンブレラが?」

「わからん。だが、かなり昔のものだ」

「こんなところで何の実験をしてたの……」

「向こうにはトライセルか……一体どういう関係だ……?」

ツキン――と胸の奥によくわからない痛みが走った。
アンブレラ、実験、トライセル……始祖ウィルス……?

ふと頭に浮かんだ知らない単語に、俺は無意識に頭に手を当てた。
始祖ウィルスってなんだ?アンブレラ、って言葉を俺は聞いた事がある?

「ナツキ?……ナツキ!」

「ぇ、あ、何?シェバ」

シェバに大声で呼ばれて、頭に当てていた手を瞬時に元の位置に戻した。
笑顔を取り繕って、シェバのほうを向く。

「大丈夫なの?ボーっとしてたみたいだけど」

そんなにぼんやりしてた覚えはないが、シェバが言うのだから本当なんだろう。
大丈夫だよ、とシェバに返して俺は笑顔で胸を叩いた。

その様子を見て、シェバはため息をつくと「無理しないでね」とだけ言った。
庭園の奥は今までと打って変わって、真新しい建物だった。



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