広場の中央には、大きなハンドルが設置されていた。 トラップだろうが、回さない事には先には進めなさそうだ。
クリスは片方のハンドルを持ち俺とシェバはもう片方のハンドルを持って、ゆっくりと回す。 ハンドルを半回転させると、どこからともなく地響きが聞こえてきた。
「な、何何々!?」
奥の扉が開くのと同時に、直径2メートルはあるであろう火の玉が4つ転がってきたのだ。 しかし、火の玉に躊躇しているうちに扉が徐々に閉まっていく。
火の玉を避けながらすばやくあの扉に入らなきゃいけないみたいだ。
「ナツキ、シェバ!一気に切り抜けるぞ!」
「わかったわ!」
火の玉の動きを見極めて、3人は走り出す。 閉まりつつある扉に滑り込んだ。 一番最後に俺がスライディングして入り、扉は閉まった。
「ふう……まさに危機一髪だったな」
「死ぬかと思った……」
少しばかり、焼け焦げた自分の服の裾をつまみながらぼやいた。 ホント、危機一髪どころか、デッドオアアライヴだよ。
荒れた息を整え、階段を下りる。 石で出来た重たい扉を、こじ開けて先に進んだ。
悪趣味な石像がいくつも両端に並べられた通路に来た。 敵の気配はなし――。
「趣味悪いなぁ……」
石像に近づきながら菜月がそういった瞬間―― ガクンと足元の床が少しばかり下がった。
……あ、れ?なんか、やべぇ?
ゴゴゴゴゴ――と本日何回目かの地響きを聞き、俺は冷や汗をたらした。
「走れ!」
クリスが言うと同時に、両サイドに立っていた石像が倒れ始める。 俺は情けない悲鳴を上げ、全速力で走り出した。
ずっとついてくる後ろからの振動と石が壊れる音に恐怖を感じながら、俺はひたすら脚を動かす。
「うぉおお!!!?」
途中にある落とし穴を雄たけびを上げて跳び越える。 誰だよ!こんなところに穴開けた奴!!!
だが、跳べたからといって安心するのはまだ早い。 未だに俺たちを追って、倒れまくっている。 菜月は再び足を動かすと、辛うじて残っている元気を振り絞って走り始めた。
「まだかよぉ!!!!」
「口動かしている暇があったら足を動かせ!」
泣きそうな声を出していたら、クリスに怒られた。 確かにそうだけど……そろそろ俺の体力限界なんですけどっ!! 全力疾走の更に上回るスピードを出して、走り続けるのにも限界ってものがある。
だー!とかうー!とか変な声を上げて、俺はとにかく走る。 声を出しとかないと、走る気力がなくなってしまいそうだった。
「俺がっ!悪趣味な像だって!言ったからかっ!!?」
思い当たる節はそれぐらいしかない。 クリスとシェバにじと目で睨まれて、俺は顔をそらす。 ……だって、悪趣味だったんだもん!確かに個性って必要だけどさっ!!
ここに住んでたであろう人々に文句を垂らしまくりながら、再びあった穴を飛び越える。
「うぉおぉお!!――あべしっ!」
いってぇえええ!!!じゃなくておちるっ!! 雄たけびを上げて跳んだのは良いが、幾らかジャンプ力が足りなかったらしく、 脛を向こう岸にぶつけてしまった。ようするに飛び越えれなかった。
と言う事は、すなわち落ちる。
重力に引かれて落ちる体。 をぎりぎりのところで淵を掴んで止める。
「「ナツキ!!」」
菜月が落下した事に気づいたクリスとシェバが急いで駆け寄ってくる。 クリスが菜月を片腕のみで引き上げると、手を引いて走り出した。
ゴールである扉が、閉まりつつある。 俺たちは転げるように、扉の向こう側に入った。 ズン――と扉の閉まる音を最後に、像は襲ってこなくなった。
prev ◎ next
|