徐にガンホルダーからマグナムを取り出した。 弾の数を確認する。
1,2,3発だけ入っている。 いつもハンドガンを使っているせいで、3発だけっていうと少ないような気もするがマグナムの威力なら十分だ。 シリンダーをスイングインして元の位置に戻す。
チラリと後ろを見た。 ………………。 見なけりゃ良かったなんて後の祭り、と言う物だ。 恐ろしい形相をしたチェーンソーマジニが追いかけてきている。
ハンマーを引き下ろして、マグナムを持つ手に力を込めた。 ふ、と息を整える。
踵を返して、チェーンソーマジニを睨みつけた。 チェーンソーを振り上げて此方に向かってくるそれに心臓が破裂しそうになる。
「ナツキ!」
シェバが駆けつけてくれたが、俺は目もくれずマグナムを放った。 弾はチェーンソーの頭を吹っ飛ばした。
相変わらずマグナムを撃つと腕が痺れる。 ビリビリと未だに痙攣している。
「ちょっと!マグナムなんてどこで手に入れたの!?」
「ぁああ〜と、あの、集落で」
さ、っと痺れる腕を自分の背中にかくした。 途端にシェバの目が鋭くなった。
「待って、腕見せなさい!」
「……ぃっ!」
腕を掴まれて、思わず声が出た。 未だに痙攣する腕を見てシェバが険しい表情をした。
「ぁの……」
「これ以上、マグナム使わないで。ナツキの腕が使えなくなるわ」
俯いた菜月の耳に届いたのは自分を心配する優しい声。 さらりと腕からマグナムをとられた。
「ごめんなさい……」
「あら、どうして謝るの?」
訳が分からない、という顔で聞き返された。
「どうして、って……迷惑かけた……」
「迷惑なんかじゃないわ。ナツキは謝らなくてもいいの」
ぽん、と優しく頭を撫でられた。 余り感じた事がないくすぐったさに菜月は情けない表情のままシェバを見た。
「このマグナムはどうしようもないときに使って。私たちがいなくて大変って時にね」
掌に乗せられたのは、先ほどのマグナム。 きょとんとした顔でシェバを見る。
「いい、絶対よ。それ以外は使っちゃ駄目」
「……うん、約束する」
自分を心配してくれてるって分かったから。 菜月は先ほどよりも重みのあるマグナムをガンホルダーに入れた。
変わっていないはずなのに、なんだか重い。 変なの……。
先に進みたいのは山々だが、一つの炎を消すだけでは通る事が出来ないようだ。 道を塞ぐもう片方から噴出されている炎を見て、菜月は小さくため息をついた。
どうしてこうも、罠とか行く手を塞ぐ物が多いのか。 すいすいと進めたら楽なのに、と心の中でぼやく。
この炎を止めるには、先ほどと同じようなリフトに乗らなくてはいけないようだ。 流石にあんなものが出てくると、リフトにこれ以上乗るのは遠慮したい。
「クリス、行ってくれよ」
さっきは俺が行ったんだから!と強く言えば、しぶしぶリフトに向かってくれた。 対岸についたクリスがハンドルをギコギコ回すと行く手を阻んでいた炎が消えた。
何も出なかった、と安心して菜月はクリスのほうに行こうとした。 が、耳を劈く"あの"音が聞こえてきた。
「え"……?」
さぁーっと顔から血の気が引くのが分かる。 上を見た。10メートルはあるだろう高さから、ちょうどチェーンソーマジニが飛び降りたところだった。
何か俺は恨まれるような事はしただろうか?
目の前に降り立ったそいつを見て、俺は涙目になりながら回れ右をした。 傍にいたハズのシェバはすでに距離を取っていて、ことさら涙がちょちょぎれた。
マグナムを取り出そうとしたが、ついさっきした約束を思い出してやめた。 マグナムなら簡単に倒せるのだろうが、自分の腕が壊れてしまう。 それだけは避けたい。
菜月はマグナムを取ろうとした手をハンドガンに向けた。
シェバがマシンガンで、クリスが高台からライフルでチェーンソーマジニを狙い打つ。 俺はチェーンソーが2人の方に行かないようにひきつけながら、走り回る。
……あれ、俺一番しんどい役回りじゃね?
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