- ナノ -

第七話



「ここに嵌めるんだよな?」

4つの石版を一つ一つ組み合わせていくとどこからともなくカチャ、と鍵の開く音がして扉が開いた。
ホントにいったいどういう原理なんだろう?
考えても、俺の頭じゃなーんもわかんないけどね!

扉をくぐり、集落にたどり着いた。
集落だというのに人気がまったくない。
罠なのか、それとも単にいないだけなのか……おそらく前者だ。

慎重に、細心の注意を払って集落を散策する。

細い小道に差し掛かったときだった。

ヒョロヒョロロ!鳥の鳴き声みたいな音が聞こえて、菜月は足を止めた。
辺りを見渡しても何もない。

でも、かすかに感じる――敵意と殺意――。

「上かっ!!」


さっとその場から退けば、ちょうど立っていた場所に槍が刺さる。
冷や汗を掻きながら、菜月はハンドガンを構えた。

身長は2メートルを越えてるのではないかと思うほどの大男が槍を持って飛び降りてきたのだ。
もっとも気を引くのは、大男の被っているごてごての装飾のされた仮面。

銃ではとても撃ち抜けなさそうな雰囲気だ。

出てこなくていいのに雑魚マジニがぞろぞろと出てくる。

「面倒だっての!!」

菜月は銃を構えながら後ろに下がる。
カチャ、と足元に何かが当たった。なんだろう?と思って下を見る。

シルバーに光る銃。
形状からして、おそらくマグナムだろう。これなら、あの大男の仮面も貫通できそうだ。
手に持っていたハンドガンをホルダーに収めて、マグナムを拾った。

ハンドガンとはまた違う、ずっしりとした重量感。
俺は大男に狙いを定めた。ハンマーを起こして、トリガーをひk――

「うしろっ!!」

「――っ!」

シェバの声に菜月は後ろに振り返るのと同時にマグナムを撃った。
――バァンッ!!
ハンドガンとは比べ物にならない反動が菜月の腕を襲う。
反動に菜月は顔をしかめながら、大男から距離をとった。

マグナムをゼロ距離から受けた大男は膝を付いている。その隙を狙って、シェバとクリスが畳み掛けた。
未だにしびれる手を菜月は解す様に、手首を振るわせる。

大男はもう一体いる。
菜月はシリンダーを覗き込んで弾の確認をすると、大男を睨んだ。
余りマグナムを使いたくはない。出来る事なら最小数で済ませたい。
腕に負担が掛かってしまう。

バァン、バァン!!

二回連続でマグナムを放った。
二発とも見事に大男の腹に命中した。
マグナムが効いたらしく、大男はその場に倒れ伏した。

後は雑魚を倒していけばいい――
菜月はマグナムをなおして、ハンドガンをホルダーから取り出した。
若干手がしびれているが、特に気にしなくても大丈夫だろう……たぶん……。

遠くから火矢を飛ばしてくるマジニを次々に撃ち落し、見るからに痛そうな槍を突きつけてくるマジニを爆破させながら
俺たちはその場をやり過ごした。
暫くすれば数も自然と減り、仕舞いにはいなくなった。


「ふぁぁあ……疲れた……」

「ホント、奴らもしつこいわね」

シェバも疲れた表情で、菜月の言葉に賛同した。
クリスは2人の疲れ具合を見て、苦笑している。

「、とこれはどうやったら進めるんだ?」

村の中央の橋らしき物の前まで来たのはいいが、肝心の橋が架かっていない。
下に下がったままである。このままでは進む事が出来ない。
キョロキョロと周りを眺めて、視界に入ったのはまわせそうなハンドル。

「あれじゃない?」

指をさして、シェバとクリスに確認を取るように言う。
他にまわせそうなものはないし、おそらくアレでいいのだろう。

「よし、俺が回してこよう。シェバとナツキはここで待っててくれ」

クリスがそういって、ハンドルのほうに駆けていった。
暫く待っていると、ギギギ、と橋が重い音を立ててあがった。

おぉ、と感動しながら俺とシェバは橋を渡る。
向こう岸に渡った瞬間、大きな音を立てて橋が元の位置に戻った。
渡っている途中に落ちたらどうなったんだろう、という嫌な考えが頭を過ぎって菜月は顔を蒼くさせた。

向こう岸は家の一階に繋がっているみたいだ。
好奇心から、机の上にある小さなつぼを覗き込んだ。

「んぎゃっ!!」

自分の顔をめがけて飛んできた、何かに俺は全力で避けた(そのせいで尻餅ついたけどね!)
ぼた、と菜月のすぐ傍に落ちてきたそれをまじまじと眺める。
すらりと長い体に独特の先が二つに分かれた舌――って蛇ぃいいいい!!へびぃいぃいい!!毒!!毒!!

「のぉおおお!!!!?」

すばらしい反射能力で俺は飛び起きると、かつてないスピードで蛇から距離をとった。
蛇のほうは俺に気にすることなく気ままに床をは徘徊している。

どうやら、もう襲う気はないらしい。
俺は先に二階に行ったシェバの後を追いかけた。

クリスと合流できたらしく、菜月が行ったときにはすでにクリスもいた。

「叫び声が聞こえたけど、何かあったの?」

「あ、はは、」

蛇に襲われて死にそうになってましたなんてハズくていえねぇ!!
菜月は痒くもない頭を掻いて、曖昧に笑った。

話す気がないと悟ったシェバはそれ以上は聞いてこなかった。

「これに乗るみたいね」

ゴンドラに3人が乗り込むと、ゆっくりと動き出した。
少々柔な作りそうなゴンドラに、冷や冷やしながら菜月は写り行く風景を眺めた。



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