ところ変わって、とある建物の中。 俺たちを助けてくれたのはデルタチームの人たちだそうだ。
「デルタ隊長ジョッシュだ」
黒人の男の人がそう名乗った。
「クリスだ」
クリスが差し出された手を握った。 その後、ジョッシュさんが此方を向いた。
「君は?」
「ナツキです」
「そうか……シェバ」
菜月と握手をすると、ジョッシュさんはシェバのほうを見た。 その目は、妹を見るような優しい眼だった。
「ありがとう、ジョッシュ。みんなもね」
「知り合いなのか?」
不思議に思ったクリスが尋ねた。 菜月も気になっていたから、シェバを見る。
「私、彼に訓練を受けていたの」
「俺たちチームの妹みたいなもんだ」
あぁ、やっぱり。菜月は心の中で思った。
「シェバ、そっちはアーヴィングを追ってくれ……やはり奴は鉱山に向かった可能性が高い」
ジョッシュさんは、SDカードをクリスに渡しながら言った。
「これがHDDに入っていた情報だ。ここが片付いたら後を追う。 無線は常に開けておけよ」
「わかったわ」
シェバが頷いたのを見ると、ジョッシュさんはデルタチームとともに建物から出て行った。 クリスはポケットから徐にモバイルを取り出すとSDカードを読み込ませた。
画面を操作して、SDカードの内容を確認する。 菜月も横から、モバイルを覗き込む。 何か言われるかと思ったが、意外にも何も言われなかった。
画面に映し出されたのは色白で金髪の女性。
「ジル!?」
クリスが信じられない、という顔で画像を見つめる。
「どうしたの?」
画像を見つめて硬直したままのクリスにシェバが声を掛けた。 クリスはシェバの声でハッと気がついたようだ。
「この画像……やはりジルは…………いや、なんでもない」
何かを言おうとしたが、クリスは言葉を濁らせた。
「行こう!シェバ、鉱山の場所は分かるか?」
「駅の向こうよ。そんなに遠くはないわ、急ぎましょう」
建物を出ると、列車が止まって見通しが悪い。 ハンドガンをガンホルダーから取り出して握り締める。 いつ敵が来ても撃てるように。……いつの間にか、撃つ事に戸惑いがなくなっている自分に自嘲した。
「悪いな、もう少し俺たちに付き合ってくれ」
「ハハ、もう仲間でいいと思うんだけど」
クリスにハンドガンの弾を入れてもらい、ついでに弾の入れ方も教えてもらう。 少しばかり、弾ももらった。
「そうだな、ナツキももう俺たちの仲間だ」
「ちょっぴりビビリだけどな」
「射撃の腕前はすごいのにな」
「そうかぁ?」
お互いを見合わせて小さく笑うと先を進んでいるシェバを追いかけた。
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