「クリス!あそこ!!」
大きな扉の向こうをシェバさんが指を差した。 なにかが燃えてもうもうと煙を上げている。
急いで扉を開けて、中に飛び込んだ。
ちょうど中央に位まで来たときだった。 ヴゥンとバイクがエンジンをふかすような音が聞こえ、3人はいっせいに振り向いた。
「げぇっ!!?」
バイクに乗ったマジニが片手に鎖をもち、こちらに向かって飛んできてるではないか!! 菜月は慌てて横に体を転がした。
「クリスッ!!」
シェバさんのあせった声が聞こえた。 慌ててそちらを見た。鎖が足に引っかかりクリスが引きずられている。
引きずられているのはクリスなのに、菜月まで背中が痛くなりそうだ。
タァン!
銃声が響いて、クリスが転がりながら鎖から開放された。 シェバさんが鎖をうまく打ったらしい。
すごいなぁ、なんて思っていたら目の前からバイクの音が……したような気がする。
ぎぎぎ、と油を差し忘れたロボットのように首を前に回した。
「んのぉおおおぉお!!!???」
此方に睨みを利かせながら、エンジンをふかしているマジニがいた。 今にも菜月に向かって走り出しそうである。
反射的にハンドガンを構えて発砲する。 バイクのタイヤにうまく当たり、マジニは転倒した。
「ふぅ……」
とりあえず倒すことができ、菜月は安堵のため息をつく。
「ナツキ!後ろだ!!」
「え゛!?」
後ろを振り向けば、こちらに向かってきている三体のライダーマジニ。 思わず足がすくんだ。
こんな距離じゃあ逃げることも叶わない。
(もう無理だ……)
菜月が諦めかけたそのときだった。
タァンタァンタァン!!
どこからともなく聞こえてきた銃声が、三体のマジニを意図も簡単に倒した。 転倒したバイクが菜月の横をすり抜けて壁に当たって爆発した。
「大丈夫かい?」
「ひゃい!!?」
背後から聞こえてきたシェバさんでもクリスでもない声に菜月は奇声を上げた。 ものすごい勢いで後ろを振り向けば、優しそうな顔の男の人が。
マジニではない事に菜月は安堵しへらりと笑った。
「大丈夫です……驚いてすいません」
「ハハ、気にしなくていいよ。声を掛けるタイミングが悪かっただけだしね」
男の人に促されて、シェバさんとクリスの方に向かった。 どうやら味方が駆けつけてくれたみたいだ。
クリスとシェバさんのほかにも、3人誰か知らないけれどいた。
「クリス!シェバさん!」
「ナツキ!怪我はないか?」
「無いよ……クリスは大丈夫?」
引きずられてたじゃん。と言えばプロテクターを着ているから大丈夫さ、と笑顔で返された。 恐るべし、プロテクター。
「あら、いつの間に仲良くなったの?」
「へ?何が?」
「クリスの事呼捨てなのに、どうして私は呼捨てじゃないの?」
「呼捨てのほうがいいですか?」
もちろん、とシェバさん――改めシェバは笑った。
prev ◎ next
|