- ナノ -


予想通り、脇の小部屋に黄色くカラーリングされた大きな機械が置かれていた。レバーを引いてリフトの電力を復旧させる。それ以外にも武器や弾薬、手榴弾も大きな戸棚に並べられていたため、ありがたく頂いて置いた。

リフトの電力も復旧させ、物資の補充も終え、三人はリフトに戻る。さあ、レバーを引くぞと手を掛けようとしたタイミングで手元に何かが落ちてきた。

「ん?」

反射的にキャッチして、それを暫し見つめる。茶色くて、細長くて、天辺に紐がついてて、火花がバチバチ──

「だいなまいとぉおおおお!!!?」

リフトの向こう側に向けて思い切り放り投げる。僅か数メートルの所でダイナマイトは小規模の爆発を起こした。投げるのがもうちょっと遅かったら、自分がミンチになるところだった。笑えない。

ドクドクと鳴る心臓を抑えようと胸元に手を当てて深呼吸をひとつ。

ガコン──

「がこん?」

足下が揺れて動き出す。リフトが起動している。ハッとして二人を見たら、シェバがいつも以上の笑顔で手を振っていた。

うん。これは嵌められましたわ。

全てを悟り、ナツキは遠い目をする。シェバに恨まれるような事をしただろうか。
リフトの上で格好の的となった俺に雨のように降り注ぐ弾を右に左に避けて、避けて避けまくった。リロードの僅かな隙を狙って、攻撃を仕掛ける。

「今だっ!」

ガコン──引き金を引いたと同時にリフトが停止して手元が狂った。弾丸はマジニの耳元を掠めただけに終わる。幾らなんでもタイミングが悪すぎた。複数のマジニからずらりと銃口を向けられて、冷や汗が額を伝う。

下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。流石にマシンガンの連射×2は避けきれる自信がない。ばら蒔かれるマシンガンを何とか避けて、ナツキはハンドガンを構えた。幸い足場は止まっている。目をすがめて、瞬時に狙いを付けて撃ち抜いた。

残るは一体──そのままの流れで銃口をずらし、隣のマジニを狙う。

ダァン──

「はぁう!!?」

鼻先を掠めた不意打ちにナツキは尻餅をついた。どこからの攻撃だ?と鼻を押さえながら、銃弾が飛んできたであろう方向を確認する。

ギラリと重厚な輝きを放つライフルを構えているのは──シェバだ。心なしかその銃口は俺の方を向いているような。うん。気のせいだと思いたいけれども。

「早くリフトを動かしてくれるかしら?」

「は、はひぃ!ただいまぁ!!」

遠くにいるはずなのに耳元で聞こえたシェバの声にビビり散らしながら、ナツキは急いでこちら側のレバーを引いた。

合流してさあ進むぞと一歩踏み出した瞬間、タイミングを見計らったように奥からロケットランチャーを担いだマジニが出現する。他にもスタンロッドを持ったマジニもいた。

「ちょっっ!それはマジでヤバい!!」

自分に向かってくるロケットランチャーを屈んで避ける。ゴォッと銃弾では感じられない熱気が真横を通りすぎて、下の階で機械に当たって激しい爆炎を上げていた。

「二撃目が来るぞ!早く倒せ!」

「そんな事、言われて、もっ!」

素早く立ち上がり発砲する。敵もほぼ同タイミングでロケットランチャーを発射してきた。弾速はこちらの方が速い。空中で弾が衝突して、黒い爆煙と火の粉が飛び散った。

「うわっ!火薬くせっ!」

煙に巻き込まれて噎せ込む。熱された火薬の臭いが鼻を刺激して、目尻から涙が溢れた。

「ナツキ!撃て!」

煙が晴れると同時にクリスが叫ぶ。視界はまだ悪い中、ナツキは照準を合わせて弾を放つ。今度は撃たれる前にマジニの眉間を貫いた。

「流石ね。でももう少し周りに気を配りなさい!」

ナツキの背中を守るように、シェバがマシンガンを撃つ。視線の先に断末魔の声を上げるマジニがいた。いつの間にか近づいて来ていたようだ。

「サンキュ!」

「どういたしまして!でも、まだ油断しないで」

「怪我はするなよ?」

視線を合わせて小さく笑いあう。そして、それぞれの目の前の敵を睨み付けてトリガーを引いた。

シェバが最初にマシンガンで敵の牽制をしつつダメージを与えて、次にクリスがショットガンで敵を吹き飛ばし、最後に俺がトドメを刺す。駆け足でどんどん先へと進む。

ただ二人と進む、この時がずっと続けばいいと、そう、思った。



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