- ナノ -



side:Ethan


モローを倒し、無事湖から脱出したイーサンは、四貴族の一人であるハイゼンベルクに従い森の砦を攻略してローズの胴体が入ったフラスクを手に入れた。胡散臭さはあったがハイゼンベルクの言う通りに祭壇に四つのフラスクを捧げ、新たな場所──ハイゼンベルクの工場へと足を踏み入れたが、結局奴とは相容れる事なく終わった。

当然だ。大切なローズを人殺しの道具にしようとしている奴となんて協力したくもない。怒りを滲ませながら、淡々と工場を攻略する。

「クソ野郎が!」

ドリルを腕に取り付けられた敵の胸元に潜り込んで赤く光るコアをショットガンで吹き飛ばした。倒れるゾルダートに目もくれず、イーサンはずかずかと大股で突き進む。

ハイゼンベルクのご託にもイライラしていたが、モロー襲撃で居なくなったあの能天気な男にも苛ついていた。
変な男だと思っていたが、まさかクリスの仲間だったとは。ミアの事もローズの事も全部知っていたのに黙っていた訳だ。


──保護すべきかと、思って……。


──黙ってた事は謝る……!でも、俺は、俺たちは、そんなつもりでミアさんを殺した訳じゃ……。


「……そんなつもりじゃなかったなら、どういうつもりだったんだ」

その言葉に返答してくれる男は今はいない。
俺が睨むと酷くショックを受けたように泣きそうな顔をしていたのが脳裏にこびりついている。何も解らない。自分に関係する事なのに、俺だけが何も知らずにいる。

行きどころのない気持ちを敵を殲滅することで押さえようとしたが、無理だった。ハウラーが落としたゴーグルを踵で踏み潰して、イーサンは次の部屋に続くドアを押し開けた。


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