とくん、とくん──鼓動が響く。
「ウイルスへの拒否反応はなし。バイタルは安定。睡眠学習により最低限の知識は問題ない」
聞いたことのない声が微かに聞こえた。
ここは、どこだろう。
わからない、わからない。
「肉体の急成長も一時はどうなることかと思ったが……」
誰かの声を聞きながら、自分が目を閉じていることに気づいた。くっついているかのように硬い目蓋を持ち上げる。ぼやけた視界に白い何かが複数、映った。
よく、見えない。
口を開いたら、ぽこりと気泡が溢れて目の前で弾けた。水の中にいるみたい。変な感じだ。
重い腕を前に伸ばしたけれど、何かに阻まれた。幾つもの管が腕に絡まっている。重たかったのはこれのせいらしい。ちょっぴり邪魔だ。鬱陶しくなって、腕を振る。
こつ、と音が出て、遠くにいた白い影が集まってきた。気づいてくれたことが嬉しくて、手を伸ばす。
「意識レベル上昇しています!」
「鎮静剤を打て!まだ目覚めさせては──」
ガラスの割れる音が響いた。
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