「え?皆コードネームとかあるの!?」
丁度、作戦会議も終わり、各々がだらけている所でナツキは声を上げた。周りを見回すと、皆まあ……という生温い反応で、ナツキだけが知らなかったことを知る。
「作戦中、名前で身元がわれないようにするためにな」
と、ローランド。
そういえばナツキは実働部隊所属といえ、色々と事情がありクリスと二人での作戦ばかりで、隊を組んで実地任務をする機会がなかった。最小人数の組では本部と通信とるだけだからコードネームも必要もない。
「コードネームとかスパイ映画みたいでカッコいいじゃん!」
「……お前の知識の片寄りは映画のせいか……」
頭が痛い、とばかりにディオンが眉間を押さえながらため息をついた。
通信機でコードネームを呼びあう主人公のカッコよさは最強だと思う。正直憧れさえ抱く。
「じゃあ、ディオンは何ていうの?」
「俺はナイトハウルだ」
「あ、俺はケイナインね」
ひょい、とディオンの後ろからチャーリーが顔を出す。
「アンバーアイズだ」
「ロボ」
「私はタンドラ」
ローランド、ジョン、エミリーが続けてコードネームを言った。皆それぞれ個性的で存在感のあるコードネームだ。羨ましい。
横に立つクリスにも目を向けた。
「俺はアルファだ。隊長だからな」
俺の反応にクリスは楽しそうに笑みを浮かべている。ハウンドウルフ隊全員にコードネームがあるなら当然俺だって欲しい。
「俺もコードネーム欲しい!クリス、決めていい?」
「あぁ、好きな名前にするといい」
クリスに許可をもらったナツキは早速考え込む。折角だからカッコいい名前にしたい。"ナツキ"という自分の名前も嫌いじゃないけれど、海外のカタカナの名前の方がカッコよさ的には上だ。
「うーん……何がいいかなぁ」
とはいえ、さっと思い付くようなカッコいい単語が思い付かない。顎に手を当てながら天井を見上げて唸る。
「聞き取りやすくて呼びやすけりゃ何でもいいと思うけど」
「いや、一応ハウンドウルフ隊は狼にちなんだコードネームにしてるんだからそこは揃えるべきだろう?」
皆俺のコードネームにはあまり興味がないらしく、わりとどうでもよさそうな顔で雑談している。年齢の近いディオンとチャーリーは一応考えてくれているみたいだが、ローランドとジョンはクリスと別の話をしているし、エミリーに至ってはデバイスを弄っていた。
皆酷い。俺の名付けをもうちょっと真剣に考えてくれたっていいのに。特にクリス。
あーでもない。こーでもない。と考えて、ふと自分のデバイスの待受の猫を見て、閃く。
「決めた!!俺コードネーム猫にする!フィーライン!」
キャットやキティではなくフィーラインならコードネームとして個性もあるし、呼びやすそうだ。我ながら良い案を思い付いた、とナツキは満足げに頷く。
「狼を掠りすらしてない……」
「まあ、フィーラインには狡猾という意味もあるし、まだそっちなら……」
「あいつは猫って言ってるけどな」
ディオンとケイナインの言葉は都合よくナツキの耳には届かずに終わる。
「あぁ!ナツキにぴったりだ!それにしよう!」
「やったぁ!」
((隊長、親バカ発動してるなぁー……))
クリスとナツキを除いたハウンドウルフ隊の心が一致した瞬間だった。
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