- ナノ -



どん、とグレネードが爆発し、敵を一気に吹き飛ばす。爆撃によりあちこち地形が変わっていて目的地までかなり遠回りさせられていた。
その上、ライカンの群れが止めどなく襲撃してくる。多い、どころの話じゃない。終わりが見えない。何とかクリスに攻撃が届く前にライカンの頭を吹き飛ばす。一息つく間もなく、二発、三発、と続けて狙い撃つ。

(外したっ──)

狙いを定めた筈が、敵の真横を通りすぎて家屋に穴を開けていた。集中力も途切れてきている。しっかりしろ。心の中で自分を叱咤して、銃を構え直した。

不意に鼓膜が唸り声を捉えた。それもかなり近場だ。ハッとして振り返る。

「──っくそ!」

援護に夢中すぎて、背後からの接近に反応が遅れた。すでに振り上げられた斧が目の前にある。防御も間に合いそうにない。

痛みを堪えるために歯を食い縛った。

ダァン──

目の前でライカンの頭が弾け飛ぶ。更に続けて周りのライカンまでもが一掃された。

『怪我はないか?フィーライン。背後の敵には気を付けろ』

「……助かったよ、アンバーアイズ。うん、気を付ける」

『まあ、俺が付いてる内は背後なんて気にしなくていいがな』

ベテランスナイパーの言葉は心強い。心置きなく背中を任せられる。俺は俺でクリスの背中を守らなくては。

ライフルをコッキングして、新たに湧いて出たライカンに狙いを定めた。


仲間の援護もあり、何とか目標地点までたどり着けた。元々はドミトレスク城に続く道だったそこは見る影もない。巨大な菌糸の触手が大樹のように城門に絡み付いて蠢いている。

そびえ立つ悪趣味なそれを見上げながら、ナツキは一度クリスに目配せしてからロボに呼び掛けた。

「ロボ、準備は出来てる?」

『あぁ、いつでも行けるぞ。フィーライン』

「オーケー、座標を指定する」

ロケーターのスイッチを押して触手に向けてレーザーを照射する。狙いをつけるのに時間が掛かるのが難点だが、その分威力も破壊力も申し分ない。

数秒後にドン、と砲撃が飛んできて、激しい爆炎を上げる。だが、一撃では崩しきれなかった。もう二、三度撃ち込む必要がありそうだ。

『装填する。待ってくれ』

「了解」

『群れがそっちへ向かった』

続けてナイトハウルから通信が飛んでくる。それと同時に複数の遠吠えが重なった。かなり数が多そうだ。

「気を付けろ、フィーライン。お前は砲撃準備完了次第、レーザーの照射」

「了解、アルファ」

高台から降りてきたライカンの群れを睨み、ナツキは銃を構えた。


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