焚き火でライアットの肉を焼いて食べる。最初は悪魔の肉なんて、と嫌厭していたが、腹が減るのは人の摂理で。エリカの我慢も精々2日が限界だった。
嫌々ながら食べたライアットお肉も、お腹が空いていれば存外食べれなくはなかった。コンバットレーションと同等程度の味だ。悪くはないが良くもない。
しっかりと焼けた骨付きの肉にかぶり付く。はしたないが魔界には皿もカトラリーもないのだから仕方ない。多少の行儀の悪さは目を瞑って欲しい。
「んん……せめて塩でもあれば……」
調味料があれば悪魔の肉でももう少しおいしく食べれそうなのだが、それもここにはない。モシャモシャとゴムの如く弾力のある肉を咀嚼しながら、人間界の道具に思いを馳せる。
「次はケイオスでも食べるか?」
「えぇ……?それは硬そうだから嫌だわ。せめてヒューリーならまだ……」
ケイオスの刺々しい背中を思い出して首を横に振った。食べるのは見た目がまだ爬虫類に似ているライアットばかりだが、飽きるからとダンテは色々と提案してくる。
エンプーサクイーンの足を掴んで引き摺って来たときは、絶対に食べたくないと全力で拒否した。爬虫類はまだしも、虫は嫌だ。そんなエンプーサクイーンをダンテは焼いて食べていたが。
ゲテモノを食べるのは本当に困窮した時だけにしておきたい所だ。
「なら次はヒューリーを捕ってきてやる」
「……あ、うん。ありがとう、バージル」
別に食べたい訳では無かったのだが。
エリカを喜ばせようとしてくれているのは分かるのだが若干ずれている辺りがバージルらしい。気持ちは嬉しいため一応感謝するとバージルは薄く笑みを浮かべていた。
そんなバージルをダンテが放っておくわけもなく──
「俺が秒で狩ってきてやるよ、姫様」
「へ?あぁ、うん」
肩に腕を回してきたダンテにいち速く反応したのは私──ではなくバージルだ。素早く立ち上がり、目にも止まらぬ速さでダンテに閻魔刀を突きつけた。
「貴様……気安く触れるな!」
「良いじゃねぇか、お前のでもあるまいし……──はいはい、ほらよ」
閻魔刀を持つ手に力が籠って蒼電が迸る。ダンテが即座に両手を上げてエリカから離れたのを見て、バージルはふんと不愉快そうに鼻を鳴らし、閻魔刀を納めると背を向けて大股で歩きだした。
待てよとその後をダンテが追いかけていき、肩を掴もうとしたのをバージルが鬱陶しそうに振り払う。
「何だかんだで仲良いのよね……あの双子」
ぎゃあぎゃあと言い合いをしながらも二人で駆けていくその背中を眺めて、エリカは持っていた骨を焚き火に投げ入れた。
因みにヒューリーの肉は身が締まりすぎてて美味しくは無かったこともここに綴っておく。
ex.2 お肉のお味は?