- ナノ -
ニコと合流したエリカはモーターホームの出っ張りを掴んで荒っぽい運転に耐える。先程から車体が跳ねるたびに天井に頭をぶつけて痛い。

「ネロだ!」

ニコが突然叫んだ。フロントガラスの向こうでネロが全力疾走しているのが見えた。あそこに置いてきてしまったが、どうやらネロも無事に脱出していたらしい。

「ネロ!乗れ!!」

窓を開けて、ニコがネロに呼び掛けた。即座にトリッシュが出入り口のドアを開けて手を伸ばし、うまく掴んで中へと引き込んだ。

「バージルを知ってるか?」

ネロは開口一番にそう訊ねた。聞かれたトリッシュが「多少はね」と答える。

「俺の父親ってのは本当か、トリッシュ!?」

「そうね。私もそう思ってた」

「何だよ、それ!」

乱暴に壁を叩き、それでも怒りが収まらないのかジュークボックスも殴った。落ち着かせようとレディが声をかけたがそれすらも振り払い、ネロは怒鳴る。

「ニコ!止めろ!」

「アホか!」

無茶苦茶な要求をするネロにニコが負けじと噛みついた。クリフォトは崩壊と成長を繰り返しながら、地上を侵食し続けている。ここで止まろうものなら敢えなく皆仲良くお陀仏だ。

「いいさ!勝手にやる!」

苛立ちに任せて、ネロは止める間もなく飛び出してしまった。開け放たれたドアを見つめてエリカは悩んだ。けれど悩める時間はそう多くはない──このまま、安全な場所へ逃げおおせていいのか。と、自問自答する。

(V……)

脳裏にVの姿を想い描いて、静かに息を吐き出した。あぁ、いや──悩む必要など初めからなかった。心は最初から決まっている。

「ニコ!私も追いかける!」

「おい!死ぬ気か!?」

モーターホームの入り口に手を掛けて、ニコの静止も聞かずに飛び出す。意識を集中させて悪魔化し、両翼に力を込めた。意思通りに動く翼にエリカは感動する。マルファスと戦っていた時は必死すぎて何もかも無意識だったから分からなかった。

「後悔はもうしたくないわ……」

遥か空を見上げて、エリカは羽ばたいた。
後悔だけは

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