躍り終えたダンテを眺めているとぱちりと目があった。
すっかり忘れていたが、ダンテとは初対面ではない。魔剣教団時代に少しだけ言葉を交わした程度だが。
「そういえば、どこかで見たことのあるレディだ」
「まあ、あるわね……」
ダンテは大股でこちらに歩み寄るとナンパのようなセリフと共に片手を取り──手の甲にキスを落とした。反応に困る対応は止めてほしいものだ。生返事を返しつつ、半目で自分より幾らか上にある顔を見上げる。
「美人に見上げられるとごっ──」
不自然に言葉が止まる。痛ぇなと振り返ったダンテの頭に見覚えのある杖が刺さっていて、エリカは瞠目した。明らかに即死レベルの怪我を痛いで済ますダンテもダンテだが、味方を遠慮なしに刺すVもVだ。
「急がねば、手遅れになる」
「……あー分かってるよ」
ぱっと私から手を離し、ダンテは面倒そうにヒラヒラと手を振った。すでに治りかけの後頭部が見えて、ダンテの人外さを再確認する。ゴキブリより生命力がありそうだ。
「待って、私も行く」
「まだ着いてくるつもりかよ。こっから先はマジで危ねぇんだぞ?ニコと一緒に待ってろよ」
当然ながら、ネロが黙っていなかった。エリカだってユリゼンに会って、そのヤバさは十二分に理解している。それよりも不安なのは──ちらりとVを見た。動く度にVの周りに光る砂のような塵が舞っている。悪魔が崩壊する時のような、それだ。
「私だって雑魚くらいは相手にできる。戦力は多い方がいいでしょ?それに──その……あっ!禁断の果実なんて、研究するしかないじゃない」
「はぁ?」
いい淀みかけて、強引に言葉を繋げた。実際、禁断の果実とやらがどんな物なのかは気になっている。
「おい。言い合いするのは結構だが……時間がねぇんだろ?お前らにユリゼンを倒させるわけにもいかねぇし、俺は先に行くぞ」
「あ!おい!待て、ユリゼンを倒すのは俺だ……!」
「グリフォン。行くぞ」
「あぁ!もう!私も行くったら!!」
動き出したダンテを追いかけて、ネロが走りだす。その後ろでVがグリフォンに捕まった。競争のように降りていく三人の背をエリカは慌てて追いかけた。
言い訳と競争心