- ナノ -
ネロは存外すぐに目を覚ました。

というよりも、エリカが傷口に消毒液をぶっかけたら飛び起きた。結構な大怪我を負っていたはずだと思うのだが、すでに小傷は跡形もなく、大きな傷も治りかけていた。相変わらず身体は頑丈で羨ましい。ネロといい、ダンテといい、スパーダの血筋はどんな怪我をしたら死ぬのか気になるところだ。

それはさておき──一先ずはVとダンテが集まるのを待つことになった。

「あぁ……すっきりした……」

その時間を利用してエリカはモーターホームのシャワールームを借りて全身の血を落とした。流石に服までは洗えないため、そのままだが手足や髪の血が落ちただけでも大分マシだ。

モーターホームの屋根に腰かけて、ふう、と一息をつく。

「エリカちゃん、いい匂いネ」

タオルで髪の毛の水気を取っていると、横にグリフォンが留まった。スンスンと鼻先を寄せてくるグリフォンの嘴を鷲掴む。

「悪魔に良いと悪い匂いの概念があったことに驚きだわぁ……で、Vのとこに戻らなくていいの?」

「ぐぷぅ──エリカちゃん、乱暴……あいつらがいるんだ。問題ねぇよ」

「それなら、いいけど……」

俯く私をグリフォンが覗き込んでくる。ぎょろりとした3つの瞳孔は不気味ではあるが、どこか愛嬌を感じさせた。

「え、ちょ、エリカちゃん!??」

翼の下に手をいれて持ち上げて、困惑するグリフォンを膝の上に乗せた。そしてその羽毛に顔を突っ込む。鳥類特有のお日様のような匂いがした。

「V……消えたりしないよね……」

その呟きを聞いて、グリフォンは動きを止める。ただ何も言わずに大人しくしていた。

それから──数十分後。PM12:36。
ダンテが戻ってきた。ユリゼンと戦った筈なのに傷ひとつ無い辺り、流石伝説と呼ばれたデビルハンターだ。それと同時にVも金髪の美女──トリッシュと共に現れた。

「V!良かった……大丈夫?」

杖をつき、片足を引きずりながら歩くVに駆け寄りその身体を支えた。触れた腕は死人のように冷たい。

「…………」

返事はない。言葉を返すのも億劫なくらい疲弊しているようだ。苦い顔をしてエリカはそっと突出した地面にVを座らせた。

「おい、ユリゼンはどこに行った?」

「…………クリフォトの頂上だ」

長い息を吐き出して、Vはその問いに答える。ダンテの言葉から察したがどうやらまだユリゼンを倒した訳ではないらしい。

「逆よ、ダンテ」

頂上、と言われ、顔を上げたダンテを即座にトリッシュが否定した。

「私たちが今いる場所が根元なの」

つまり、本当の頂上は──真下。人間の血を吸い、成長したクリフォトは頂上に実を付ける。その果実は絶大な力を秘めていて、ユリゼンはそれを手にするつもりのようだ。

「禁断の果実ね。ムンドゥスもその果実を食べたとか……」

人間の血をどう固めれば絶大な力になるのか、気になる所ではある。個人的には悪魔の血の方が力がありそうだと思うのだが。

「面白い話だが今は必要ない……居場所がわかりゃあな」

話は終わり、とばかりに歩きだしたダンテにニコが駆け寄った。エリカの時と同様、興奮ぎみに話し始める。何でもニコの祖母ニール・ゴールドスタインはダンテの使用しているハンドガン、エボニー&アイボリーの製作者らしい。祖母の遺品を見てニコは跳び跳ねて喜び、そして徐にテンガロンハットをダンテへと手渡していた。

帽子を被り意気揚々と踊り出したダンテを眺める。クリフォト内部が謎にライトアップされているのもダンテの成せる技なのだろうか──何処までも規格外の男だ。

何気にダンスも上手いのなんなんだろう──。

全員集合

prev next