- ナノ -
ネロ──その名を聞いて思い出すのは数年前の事だ。

城塞都市フォルトゥナで信仰される魔剣教団にエリカは所属していた。大昔に人間を守るために悪魔と戦った悪魔──スパーダを神として崇めていた教団は今はもうないのだが。
そんなことはさておき。エリカはそこの技術局で研究員として働いていた。そしてネロは騎士団員だった。研究員として騎士団員の武器の開発、メンテナンス等諸々を一手に請け負っており、彼と知り合ったのもそれ繋がりだ。レッドクイーンはエリカが開発したのだが、その大きさと強引に推進剤噴射機構を取り付けた重みでネロ以外に扱える人間が存在しなかった。必然的にネロとエリカが会う機会は増え、彼の性格とも相性が良かったため教団内でも珍しく仲良くなったのだ。

それだけならば、エリカはネロとの再会を手を叩いて喜んだだろう。そうはいかない理由は──教団が秘密裏に研究、開発していた帰天だの救済だの、計画の一部にエリカも関わっていたからだ。人造悪魔や疑似地獄門の作成等、悪魔の研究は中々に興味深く、後先考えず研究成果を渡した結果は──言うまでもない。

エリカ自身は悪魔と融合し力を得る帰天なんて物には更々興味がなく五体満足だが、教団員の大多数は帰天し、悪魔となってしまったためダンテやネロに屠られてしまった。上司のアグナスも、例には漏れない。

教団の研究施設でネロに謝罪をしたきり、会ってはいない。そもそも城も街の一部も悪魔やダンテによって滅茶苦茶に破壊され、さっさと尻尾を巻いて逃げねば命の危険があったから仕方がなかったのだ。

そんな訳でネロに会うのは非常に気まずく、なんなら思い出のまま終わらせるつもりでいた。

「あぁ、もう……邪魔!」

道を阻むように死神のような鎌をもった悪魔──ヘルカイナが出現した。舌打ちをしながら、何もない腰元から刀を引き抜くような動作をすれば、一振りの刀が手元に現れる。白い柄のそれはエリカが教団にいたときに造った閻魔刀の模造品だ。流石に本物の様に魔界の門を開く事は出来ないが、悪魔を切り裂くには申し分ない切れ味をしている。

刀を構え、悪魔と対峙した瞬間だった。

「見つけた!!」

そんな声と共に懐かしい推進剤を噴かすツンとした匂いが鼻を掠めた。
彼との関係性

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