- ナノ -
電話でニコを呼び、合流した。気を失っていたレディも無事目を覚ましていた。体調はあまり良くなさそうではあったが、それも数日身体を休めれば回復するだろう。道中でネロも拾い、一先ずレディの話を聞いて作戦会議をすることになった。

大きなモーターホームと言えど、大の大人が五人もいると少し窮屈だ。ニコは運転席、レディは出入り口左に設置されたソファ、Vは出入り口のステップに座り、ネロはレディの正面にある赤いテーブルとセットの椅子に浅く腰かけていた。エリカも腕を組みながら、シンクを背凭れにする。

「……ダンテやトリッシュも捕まってるのか?」

「記憶にある限り……トリッシュはそうね。ダンテは分からないわ」

レディはうつむきながら、そう言った。ダンテ──その名を聞いて、エリカは目を細めた。
教団が崇めていた伝説の魔剣士スパーダの息子で、教団を滅ぼした張本人である。飄々として掴み所がなく、常に余裕綽々のあのダンテが負けたというのは正直信じられなかった。だが、レディとネロの表情がそれが真実だと物語っている。

となると。魔王ユリゼンとやらは相当に強い。当然エリカなんて羽虫を潰すよりも簡単に殺されるだろう。

「……あ、そういえば、ニコ。これ使う?」

会話が途切れたタイミングでエリカは持っていたゲリュオンの欠片をニコに見せた。ニコはそれが何かを瞬時に理解したようだ。

「最高だ!これは傑作が生まれるぞ!」

顔を輝かせて、欠片を受けとると奥の作業台へと駆け込んで行く。その様子を横目に見ながらVがゆっくりと出ていった。もう出発するつもりらしい。あ、待ってと制止を掛けながらエリカもその背を追いかけて車を出る。

「Vを信用してるの?」

「さあね。使える間は利用するだけさ──」

ネロとレディのそんな会話が聞こえて、少しだけ嫌な気持ちになった。


クリフォトに近い、とはいえ、まだ距離はそこそこある。地上は荒れ放題で思うように進めないため、地下を進むことになったのだが──。

「わざわざ二手に別れる必要あった?」

金網の向こうでVが悪魔を蹴散らしているのを見て、エリカは側で剣を振るうネロに問いかけた。効率化がどうとかVは言っていたが、二人で協力して悪魔を倒しながら進んだ方が効率的だとエリカは思う。

「さぁ、なっ!と……」

ネロが答えながら、大きな鋏を持った悪魔──デスシザーズを両断する。靄のような悪魔は悲鳴をあげて霞となって消えていった。

「勝手について来いよ。俺は先に行くぜ、V」

向こう側にいるVへ声をかけてネロは颯爽と先に進んでいく。あぁ、これは地味に対抗心出ている奴だな──そんな事を思いつつ。

「気を付けてね」

エリカも身を案じる言葉を掛けた。思惑はどうあれ今は味方なのだ。それにエリカにはVがそこまで悪い人間には見えなかった。

「……お前もな」

それじゃあ、と背を向けた瞬間に投げ掛けられた言葉にエリカは小さく笑みを浮かべた。
作戦会議

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