- ナノ -
夢を見ていた。

Vがいて、グリフォンもシャドウもいて、リビングで笑っている。穏やかな昼下がりの一幕。いつも見る風景。だから、すぐに夢だと理解できた。

リビングに一歩踏み出した瞬間に、その幻想は音もなく消える。この夢を見るのは何度目だろう。もう数えきれない。

「はは……分かってるよ、もう会えないんだ」

誰もいないリビングで自嘲する。崩れ落ちるように座り込み、膝を抱えた。

「会いたい、会いたいよ……ブイ……」

涙がこぼれ落ちて、膝を濡らす。ただ泣き続ける。泣き疲れて夢が覚めるまで、延々とただ涙を溢すのがいつもの夢の終わりだった。

「泣くな、イオリ」

骨ばった手がそっと俺の涙を拭う。はっとして顔を上げると、ブイが悲しげな表情でこちらを見下ろしていた。

いつもと違う、夢の続き。

「ブイ……ぶい……」

涙声で名前を連呼する。もっと他に言いたい事があった筈なのに、ただただ泣きながら名前を呼ぶ。

夢でも、会いたかった。ずっと。

ブイは俺が泣き止むまで、傍で手を握りしめてくれた。

Nightmare...

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