- ナノ -
一先ずはダンテとバージルと共に行動することに決まった。というか、この二人といないと俺は速攻悪魔に殺られてお陀仏だ。あの後もひっきりなしに悪魔の襲撃があり、その度に彼らが撃退している。そして──

「怪我はないな」

「あ、はい」

その度にバージルは安否の確認をしてきて、俺が頷くと安心したように仏頂面を緩めるのだ。顔に似合わず心配性なのかな、なんて思いながらバージルを見上げた。すでに外された視線はダンテの方に向いているがその距離は近い。

「どうした?」

視線に敏すぎる。声を掛けてもいないのに振り返られてどぎまぎとしながら「何でもないです」と答えると、どこか残念そうにされた。何なんだこの人は。

変な反応をするバージルは置いといて、ただひたすらに歩く。

「そういえば二人は兄弟なんですか?」

沈黙に耐えかねて、イオリは二人に質問を投げ掛けた。

「あぁ。双子のな。そっちが兄で俺が弟だ」

「へぇ、そうなんですね」

兄、とダンテがバージルの方に顎をしゃくった。相づちをうちながら、ダンテとバージルの顔を見比べる。てっきりダンテの方が兄だと思っていた。髭面なのも相まって老けて見える。

「良く似てますね」

流石に"老けてる"とは言えず、無難な感想を言っておいたが、それもこの双子にはあまりよろしくない言葉だったらしく、剣呑な表情で睨みあっていた。殺気に満ちた眼光に挟まれて、俺は言葉選びをミスしたと気づく。

(もしかして兄弟、仲悪かった……!?)

もしかしなくても、想像の通りで。無言の圧に息苦しさを感じて、持っていた本を抱き締める。

あれ、おかしいな。本当に息が──

「イオリ!!」

気がつけば俺は地面に倒れていた。徐々に暗くなっていく視界でバージルの焦った顔が見えた。
Black-Out

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