龍が如く1
23:壊れていく関係
錦山×夢主
無理矢理注意
数日前に殴られた頬がずきりと痛んだ。頬を押さえてアスカは項垂れる。躾と称して錦山は少しでも口答え、いや、気に入らないことがあると何度も殴り付けてきた。限度を知らない暴力でアスカの身体は傷だらけになっている。
それでも、まだ話せば昔のような錦山に戻ってくれる筈、と淡い希望を抱く。それがどんなにバカな事だったとしても、アスカにとっては錦山は数少ない親友のひとりだから諦めきれなかった。自分がほんの少し傷付くくらい、平気だ。内心でそう言い聞かせてずきずきと痛む傷を撫でた。
「……!」
粗暴な足音が聞こえてアスカは顔を強張らせる。ここに来る人間は限られている。食事を持ってくる新藤、それから組長である錦山のたった二人だ。新藤はこんな乱暴な足音を立てない。となると錦山だ。
荒々しく扉を開け、部屋に入ってくるなりなにも言わずに渾身の力で殴られて意識が飛びかける。
「う、うぅ……痛ぇよ……彰、」
口元を伝う血を拭い、身体を起こそうとしたが両肩を掴まれてベッドへ押し倒された。淀んだ目がこちらを見下ろしていて、怖くなって顔をそらす。
「アスカ……お前だけは、」
冷たい手が頬に触れ、それから首へと下がっていく。首を絞めるように触れられて、身体を固くした。心臓が耳の横に付いてしまったのかと思うほどに鼓動がうるさい。
「お前だけは俺の側に居てくれ」
懇願するような、囁きだった。
不安と疑心、それからアスカへの想い。触れた箇所から伝わってくるーー錦山の心はネガティブな感情で埋め尽くされていた。暴力で人を従わせても、錦山は独りだった。アスカを幽閉したのはきっと孤独を紛らわせたかった事も理由のひとつなのだろう。
「アスカ。俺はお前が好きだ」
好きだ。
好きだ。
好きだ。
言葉にされなくても分かる、痛いくらいの気持ち。ただ同性から向けられるには重すぎる好意。だってアスカは男で、錦山も男だ。その気持ちは間違ってる。
「彰……」
それに錦山は由美が好きだった筈なのに、どうして。名前を呼ぶと錦山は嬉しそうに表情を緩めた。顎を掬い、吸い付くように唇を重ねられる。
「んっ……!」
舌を入れられそうになって反射的に唇を硬く閉じる。それでも舌先が唇を割って入り、歯茎をなぞった。錦山の舌先が口の中を動き回り、アスカの舌を絡めとる。まるで女にするかのような長いキスだった。銀糸が錦山とアスカの口元から伸びる。
「、な……にすんだ、よ……」
荒い呼吸を繰り返しながら、手で顔を覆った。それが余計に錦山の嗜虐心を煽ったらしい。
「アスカは可愛いな」
「おま、どこ触って……!?」
ズボンの上からアスカの陰茎の形を確かめるように触れられて、アスカはぞわりと鳥肌が立った。錦山がナニをしようとしているのか、分からないほどアスカは子供じゃない。でも、それは本来女性とするものであって、男同士でやるものじゃない。
「は、やめ……ーー」
撫でるように執拗に触られて呼気が乱れる。その手を止めようとしたが、逆に両手首を掴まれてしまった。
「彰、やめてくれ……!」
ズボンのチャックが下ろされて、アスカも抵抗しようと唯一自由である足をバタつかせた。アスカは男とヤる趣味はない。嫌だと首を横に振り、必死に抵抗する。
「暴れるんじゃねぇよ、殴られてぇか?」
「……ひっ、」
拳を振り上げられてアスカは息をのみ、身体を硬直させる。大人しくなったアスカに錦山は嗤って、ズボンの中に手を突っ込んだ。ヒヤリとした錦山の指先がアスカの陰茎を擦るように上下する。こんな状況でも、執拗に撫でられると感じてしまう。
徐々に硬くなり、勃起するアスカの陰茎を見て錦山は更に手の動きを早くした。
「あ、あぁ……やめ、……!!」
「なんだ?溜まってたのか?感じまくってんじゃねぇか」
「そ、そんなんじゃ……」
「そんなに早くイかれたら、つまらねぇ……」
すっともみしだく手が離れた。刺激がなくなって何とか落ち着き、ほっと安堵したのもつかの間だった。ズボンをパンツと纏めて引き下ろされ、股間がさらけ出された。
下半身が外気にさらされて、その寒さに身震いする。自らのモノを隠そうとしたかったが手が捕まれているせいでできない。もがくアスカを錦山はくつくつと嗤って、自分の白いネクタイを外し、素早くアスカの両腕をベッドヘッドのパイプにくくりつけた。
そして暴れるアスカの上に乗り足を開かせると、その指先を本来排泄に使う穴へ突っ込んだ。
「ーーっ!?」
痛みと不快感にアスカは呻き、必死に身体を捩らせるが指は本数を増やして確実にアスカの中をかき混ぜてくる。
「いや、だ……やめ、やめ……」
ぐちゃぐちゃに弄られて頭が真っ白で何も考えられない。奥へ奥へと突っ込まれ、動く指先がとある一点に触れた瞬間、アスカの身体に電流が走った。
「ひぁっ!?」
悲鳴と共に白い液体が弓なりにしなる身体に振りかかる。顔に付いた白濁した液体を錦山は拭いとるとぺろりとその指先を舐めた。
「そんなもん、舐めんな……!」
「アスカの精液は甘いぜ?にしても、初めての癖に感度いいんだな」
俺のも受け止めてくれそうで安心だ、なんて嗤いながら、ズボンを下ろし自らのモノを抜き出した。アスカのモノよりもずっと大きいそれに顔を青くする。女の陰部ならともかく、肛門なんかに入るわけない。
嫌だ。怖い。やめて。必死で顔を横に振り拒否をしたが、錦山は嗤うだけだ。
「安心しろ。痛いのは最初だけだ」
亀頭がアスカの肛門に触れた。緊張で身体が硬くなる。足を閉じようとしても錦山の身体が邪魔をする。
ぐい、とゆっくりと中に入り込んでくるその質量に頭がおかしくなりそうだ。
「……痛い!嫌だ!やめろ!!」
何度言っても、錦山は止まらない。ずぶずぶ押し込まれて全部入れられた。膨らんだ腹が、中に入っている異物感がただただ気持ち悪い。
「動くぞ。力を抜け」
「や、やめ、……ひっ……!」
中身が擦れる感覚に声がひきつった。腰がゆっくりと動かされる度に痛みが走る。目尻に涙が浮かび、汚れたベッドシーツにシミを作った。びちゃびちゃと混ざる水音に吐き気すら催しそうだった。
何度も繰り返されるピストン運動。徐々に速度が上がってくる。最奥を突かれる度に頭が白くなって、意識が一瞬飛ぶ。何も考えられない。与えられる刺激が段々と痛みではなくなってきているのがわかった。
「ぁ、あぁ……い、いぃ……」
「イってもいいぜ、アスカ」
「ぁあああ!!!」
どぴゅ、と精液が嬌声と共に飛び出す。アナルの奥を打ち付けられる感覚とと陰茎を揉みしだかれる刺激が頭を突き刺して止まらない。
「アスカ」
名前を呼ばれて、顔を錦山に向ける。愛しげに頬を撫でられ、そのまま貪るようにキスをされた。絡み合う舌先から銀糸が伸びる。
「溢すなよ」
錦山の陰茎が身体から抜かれて、口へ突っ込まれた。明らかに口に入るサイズではないそれが喉にぶつかり、苦しさにえずく。
「がっ、ぐっ……!」
顔を背けようとしたが手で制される。僅かなピストンの後、ぶるりと痙攣したかと思うとそれはどぷりと液体を吐き出した。口の中いっぱいに液体が染み渡る。
「ごぼっ……う……」
喉に直接振りかかったそれを反射的に吐き出そうとしたが、錦山に口元を押さえられて吐き出すことも出来ない。溺れそうになりながらも何とか嚥下した。飲み込んだのを確認して錦山は満足そうに嗤う。そしてズボンを履き、身だしなみを整えると縛っていたアスカの手を解放した。
「お前は俺の物だ」
呪いのような言葉を囁いて、額にひとつキスをすると錦山は部屋を出ていった。アスカは白濁にまみれた身体のまま、目を閉じる。ひどく疲れた。気持ちが悪い。
口元から溢れ落ちる液体は苦かった。
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