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龍が如く0

14:本人不在


真島は李に呼び出され、ほぐし快館にいた。入るなり興奮気味の李に出迎えられ、何があったのかと問うと、女を殺したんやろ?と記憶にないことを言われ、真島は戸惑った。そこでやっとニュースを見て、蒼天堀川のマキムラマコトの偽造死体の話を知る。

「おい、お前が殺ったんとちゃうんか?あの写真の女を」

「俺は……殺っとらん!殺るわけないやろが!」

天井に吊られた小型テレビから目を反らし、李に振り返る。自分の知らないところで誰かが動いているのは気味が悪い。

「せやけど、お前……死体は昨日お前が持ってったマコトの服着とったで」

警察に見せられた写真を見たから間違いない、という李に真島の脳裏にもう一人、計画を知る男の顔が思い浮かんだ。通りすがりのカタギだと言う名前も知らない胡散臭い男だ。

「なら、アイツが殺った可能性は……」

「あのアスカ、いう兄ちゃんなら人殺せるようなタマとちゃう。昨日喋ってようわかったわ」

ーーアスカ。会ってから数日経って初めて、それも本人ではない人間から名前を知った。李の言葉に真島は眉間にシワを寄せる。

「なんで、そないなことわかんねん。わからんやろ」

「なんやお前、あの兄ちゃんと喋ってないんか?すぐわかるで、アイツは大人のフリしたケツの青いガキや」

本人の居ないところで随分な評価をしている。しかし、その評価とは裏腹に李はアスカの事をそこそこ信用しているようだ。

「身の上の話は嘘ついとったかもしれんが、あいつがマコト守りたい言う気持ちはほんまや。間違いない」

一番マコトの事を思っている李にそこまで言われてしまっては、真島はもうなにも言い返せない。

二人の会話を遮るように黒電話が着信音を響かせた。


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