龍が如く0
06:共闘
街のあちこちにしたっぱのヤクザが徘徊していた。個々はそう強くないものの、こちらには目の見えないマキムラマコトを守って動いているため、避けれる戦闘は避けて移動していると中々前へと進めない。まどろっこしさに舌打ちをしたくなる。
アスカがマコトの傍で守るように戦い、真島が遠くの敵を倒す。ほぼ初対面にしては悪くはないコンビネーションだ。
「ったく、次から次へとキリがねぇな!」
真島が取りこぼした敵を回し蹴りで吹っ飛ばしながら、イライラと吐き捨てる。アスカのそばでマコトが不安げに震えている。 目が見えない状況でこんなことになってしまうなんてとてつもない恐怖だろう。
「大丈夫か?」
「は、はい……」
一旦敵がいなくなったタイミングでマコトに声をかける。 恐怖で震えてはいるが、 怪我は無さそうだ。
「チッあいつら待ち構えとる!」
「どうする?」
真島は辺りを見回して、河川沿いの小道に駆け出す。こっちや!と促されるままマコトを連れて向かう。
「階段があるから、悪いけどちょっと持ち上げるぞ」
「えっ!? きゃっ……」
相手の了承を聞く前にアスカはマコトを持ち上げ、河原への階段を駆け降りる。そう長い階段ではなかったので、すぐ彼女を下ろしたがひどく怯えられた。無理もない。
「あんまり階段のとこいくんじゃねぇよ」
「わかっとる。でもしゃーないやろ!」
橋をわたった先にヤクザが待ち受けていたのは見たが、あまりマコトに負担がかかる場所には行くべきではない。互いに言い合いながら小走りで細い河原を抜ける。
その足は強制的に止められた。
「おっと待ち!マコトちゃん渡してもらうで?」
派手なスーツを着た男達が道を塞いでいた。敵の方が上手だったようで、先回りをされていたらしい。舌打ちを隠しもせずに真島は追手のヤクザを睨み付けた。
「その子は頼んだで」
「言われなくとも守るさ」
マコトを巻き込まないよう、後退させる。不安げに視線をさ迷わせるマコトを安心させるために軽く頭を撫で、ちょっとだけ待ってろと声をかけた。
「おらぁ!!」
「っと、あぶねぇな」
ナイフを振りかざしてきた男の腕を振り向き様に弾き、動揺した男の無防備な腹を蹴りとばした。男の手から溢れ落ちたナイフを拾い上げ、挑発的ににまりと笑う。
武器を使うのはあまり得意ではないが、それなりに練習はしているつもりだ。流石にヤクザではないから短刀や銃は使ったことはないが、ヌンチャク、トンファー等ある程度のものは一通り試した。
真島の隙を狙い、すり抜けてきたひとりと対峙する。
「おっと進ませないぜ?」
「チッ」
男も同じくナイフを片手に応戦してくる。振りかぶられたナイフをナイフで防ぎ、そのままナイフを滑らし、相手の親指に食い込ませた。赤い血が滴り落ちる。
切れ味が悪いため、切り落とすまではいかなかったが、そのつもりでさらに力をこめた。
「ぎゃあああああ!!?指が!!」
男は聞き苦しい野太い悲鳴をあげて、 ナイフを取り落としアスカから逃げるように離れる。だがその隙を見逃してやるほどアスカは優しくはない。素早く間合いをつめ、 ナイフを男の脇腹に突き刺した。
「がっ!?」
「まだまだ行くぜ?」
突き刺さったままのナイフの柄を蹴りつけて、更に深くめり込ませた。男は苦渋に顔を歪めその場に倒れ伏す。動かなくなったのを確認してから、手に付いた血をハンカチで拭った。
アスカが男を倒したと同時に真島の方も決着がついたようだ。真島が倒れた男の胸ぐらをつかみ、男を問い詰めている。
「お前ら何モンや!?なんであの女を狙っとる!」
「……お前、そんなことも、知らんと、あ、あの女をどうこうしようとしてたんか?」
真島の問いに男は信じられない、 という風に聞き返す。
それもそうだ。マコトは今東城会が血眼になって探しているカラの一坪の所有者なのだ。たった一坪に十億もの値段がつけられている。 それを手にしようと誰もがマコトを狙っている訳だ。
しかし、マコトの様子から察するに彼女自身もカラの一坪のことを知らないようだ。 ヤクザと繋がりのある真島でさえ。
「おい!どういうことや!?クソッ!」
意味深な言葉だけを残して気絶してしまった男に真島は悪態をつく。
不機嫌そうにしかめ面をして、行くで。と一言こちらに声をかけ真島は歩き出した。
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