龍が如く2
05:一期一会
side:Makoto
東京から発った飛行機の中でマコトはぼうっと座っていた。隣に座る息子と夫は昨日の夜中々寝れなかったからか、席に着くなり眠り始めていた。
そういえば──
思い出したように鞄の中を探った。ほぐし快館の最後の出勤日にマコト宛に届け物がふたつ届いていたらしい。名前は書かれていないようで同僚が常連さんですかねぇ?と不思議そうに首を傾げていたのを思い出す。その後出国の準備でバタバタしていて時間もなかったため、開けることなく鞄に放り込み、そのままになっていた。
群青色の正方形と白い色の長方形の箱にはそれぞれ水色と赤色のリボンが掛けられている。まずは正方形の軽い箱を開けることにした。リボンを引き、蓋を開ける。
「ハンカチ……?」
何の変哲もない白いハンカチがそこに収まっていた。贈り物として良くある物だし、とマコトは深く気にせずもうひとつの箱に手を伸ばした。orgelと金字で書かれていて、随分高級そうだ。
黒いベルベット地のジュエリーケースを恐る恐る開けた。
「えっ……!?」
息をのみ、目を見開く。中に入っていたのは、焦げ茶色の時計のベルトだった。マコトが着けているオルゴール付きの時計に合う茶色のベルト。どこを探しても見つからなくて諦めていたそれがケースに収まっていた。
「これって……昔、私がしてた……どうして……?」
そして、少し前に自身が施術した男とその連れを思い出す。強面であまり喋らない寡黙な客にマコトは珍しくその時計の事を話したのだ。いや、そんな、まさか──。
気付いた時には涙が零れ落ちていた。十八年前、命を懸けてマコトを守ってくれた彼らに知らずの内に会っていた。その時は気付かなかったけれど、諦めずに最後まであの場所で待っていて良かったと心底思った。お礼を言えなかったこと。それだけがずっと心残りだったのだ。
「もしかして、これも……」
ハンカチを手に取ると、隙間から何かが落ちた。四つ折りの紙を拾い上げて確認する。
ずっと借りててごめん。
元気でね。
その文面を見てやっぱり、と思った。あの日、彼に貸したハンカチだった。随分古い物の筈なのにシミも汚れもひとつもない。ずっと大切に持っていてくれたのだろう。
最後に見た彼らの姿を思い出して、マコトは静かに涙を溢した。
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