- ナノ -

龍が如く1

extra:今でも君を。


20XX年12月ーー

クリスマスが近づきつつあるここ最近はすっかり冷え込み、雪がちらつく日も多い。今年は恐らくホワイトクリスマスになるだろう、と今朝のニュース番組で放送していた。彼女もいないからクリスマスだ何だとイベント事にあまり興味はないが、雪が降るのは幾つになってもちょっぴりテンションが上がるものだ。

「冷てっ……!よし、こんなもんかな」

しっかりと磨きあげた墓石を一歩離れて確認した。見る限りは汚れひとつない。新しい花を添えて、それからハイライトとウイスキー瓶を供える。

錦山彰と刻まれた墓石の前に座り、タバコを咥えた。ふわりとタバコの煙が天へと昇って行くのをアスカは静かに見上げる。空は曇っており今にも泣き出しそうだ。

「……前は吸えなかったタバコ、今は吸えるようになったんだ。お前と同じハイライト」

すげぇだろ?なんて言いながら笑う。返事を返してくれる人はいないが、気にせず更に話し続けた。

「酒も飲めるようになったしさ……」

何でもない普通の会話。でもどうしてか目が熱くなって、鼻の奥がツンと痛む。言葉に詰まってアスカは俯いた。

「あぁ、駄目だな……ここに来るといっつも泣いちゃうよ」

何年経っても、何回来ても、変わらない。幾つもの滴が溢れ落ちて地面に染みを作った。声を出さずにはらはらと涙だけを流す。

後悔をしているのか、と問われれば答えは間違いなくイエスだ。あの頃に戻れるなら、やり直したい。出来ることなら次は3人が笑いあえる未来がいいーーそんな事、ある筈ないのだが。

「……彰」

名前を呼ぶ度、淋しさが込み上げてくる。
顔を思い出す度、苦しくなる。

そして、会いたくなる。

涙を手でぬぐい、タバコの煙を胸一杯に吸い込んだ。苦味で少し涙が引っ込む。

「安心しろよ……。俺は今もお前の事をーー」

あの日に言われた言葉をそっくりそのまま錦山へと返して、アスカは泣きながら笑った。その首もとには青い宝石の埋まった指輪がキラキラと光っていた。


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