13:救出作戦
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シンジから話を聞いたとき、血が沸騰したかと思うほどに怒りで目の前が真っ赤になった。怒りのままに思い切り壁を殴り付ける。拳に伝わる痛みで少し冷静さを取り戻す。
「お、おい……トモヤ……」
「わりぃ……それで、小田原さんと副島さんは?」
「あの二人も大ケガで、全治三週間って……」
「マジかよ……」
落ち着かないように髪を弄りながら、頭を振る。完全に向こうはもう此方を潰すつもりでいるようだ。でなければ、誘拐なんていう手は使わないだろう。
情報屋の千葉も全力を尽くして、彼女の居場所を探してくれているが、未だに見つからないらしい。
「今日、神社で集会だから忘れんなよ?」
「何回も言わなくてもわぁーってるよ……じゃあ俺ちょっと、あいつらぶっ飛ばしてくるわ」
適当に相槌を打って、シンジから背を向ける。今は白いあの特攻服を見るだけでイライラして、ムカつきが治まらない。拳をならしながら、公園でたまっている暗黒騎士団へと近づいた。
極東神社は自宅から目と鼻の先にある。掠り傷を簡単に治療してから、神社へ向かった。
「ちわっす」
神社にはすでに乙葉を除いた極東連合のメンバーが集まっていた。どうやらトモヤが一番最後だったようだ。おう、と佐伯やシンジが軽く挨拶を返したが、この場を包む空気は重い。
皆一様に険しい顔をしている。極東連合のひとりが拐われているのだから無理もない。
「お前らも知っての通り、御子神が狂走連合に捕らわれている……何が何でも救出しなきゃならねぇ……」
ヤスオは全員が揃ったのを確認して、重い口を開いた。
「は、早く助けねぇと……アイツら何するかわかったもんじゃないっすよ!」
「助けたいのはヤマヤマだけどね……どこに捕らわれてるのか……全く分からないんだよ……」
確かに情報屋の千葉ですら、その場所を把握出来ていないのだ。こうしている今でも乙葉がどんな目に合っているのか想像するだけでも、怒りで気が狂いそうだ。
爪が食い込むほど、拳を握りしめた。
「……!」
神社の前でバイクの唸り声が聞こえた。この辺り一帯で改造バイクを使っているのは狂走連合だけだ。
話し合いをやめ、全員で神社を出る。鳥居の向こうに、白い特攻服の男ーー塚田がバイクに跨がったまま此方を見据えていた。
「……会長からの伝言だ……3日後の午前0時、東関ドームで決着をつけるとのことだ」
「アイツは……乙葉は無事なのか!?」
ほんの僅かに塚田は視線を反らした後、やや間を開けながらも答えた。
「……一応は、な。東関ドームに連れて行くから……必ず来い」
「3日も待てるかコラァ!さっさと勝負しろや!」
「彼女を助けたければ……3日後の午前0時、東関ドームに来ることだな……」
怒るヤスオにも動じず、繰り返し伝言だけを伝えて塚田は去っていった。一応無事、という台詞は不安要素にしかならない。
「こうなったら……やつらの指定通りにドームまで行くしかないようだね……」
「そうだな……今、奴らの指示を無視して下手に動いたら、御子神の身があぶねぇ……」
先走って行けば、それこそ乙葉が殺されるかもしれない。誘拐なんて方法をとってきた亮はもはや手段を選ばないつもりだろう。
「3日後……行くぞ、東関ドームへ!」
ヤスオの宣言に全員が大きく頷いた。
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