クリスとの再会:01
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とりあえずクリス達にあった時のために上手い言い訳を考えておかなくては。 顎に手をあて、瑞希は考えながらのろのろ歩く。しかし右手には銃がしっかり握られている。 アルバートがホールから立ち去ったのだから、瑞希だけがあのホールに残っているのは可笑しい。 どうせなら自分も一旦姿を消し、それから別の場所で合った方がいいだろう。一番不自然じゃない。 合った時の口実としては、別の場所でも発砲があり其方をアルバートと一緒に確認しに行ったが奴らに襲われて逸れてしまった。という感じでいいだろう。
「ま、何であれ……こんな状態じゃ皆散り散りだろうな……」
なるべく物音を立てないように注意しながら、吹き抜けから階下の様子を伺った。 ジルとバリーが慌てた様子で食堂を走り抜けていく姿が確認できた。どうやら奴らを見つけたんだろう。顔は恐怖で強張っていた。 さて、彼らはアルバートに報告するためにホールに戻っていったんだろうけれど、残念な事にホールには誰もいない。 クリスが戻っているなら、話は別だけれども。
PMである彼なら恐らくは無事。動きの鈍いあんな奴らにそうそうやられない筈だ。 寧ろ元科学者で体力のない自分の方が危険なんじゃないか?自問してから、瑞希は顔を引きつらせた。 いやいや、ある程度の訓練は受けているから大丈夫な筈だ。恐らく、きっと。 アンブレラが用意した席とはいえ仮にも隊長補佐なのだから、こんな弱音を吐けばクリス辺りは大笑いするに違いない。 同じ科学者であるアルバートだが、彼は別格だ。どこで鍛え上げたのか知らないが、クリスに負けないくらいに筋肉隆々だ。
扉を開けようとしたが、何故だか開かない。 どうやらカギが壊れているようで、此方からは開けれないらしい。向こう側から強引に押せば開きそうだが……。 誰かが開けてくれればいいのに、と思っていた矢先に目の前の扉が勢いよく動いた。
ガツッ――!
「〜〜〜〜っ!?」
鼻先に直撃した木製の扉に瑞希は呻き、痛みに悶絶する。開けてくれとは思ったものの、酷い仕打ちだ。 扉を向こう側から開けた主は何かにぶつかった事に気付いたらしく、恐る恐る扉の影から顔を出してきた。
「ミズキ!?悪い、大丈夫か?」
「……全然大丈夫じゃないんだが……」
扉の向こうから現れたのはクリスだった。鼻を押さえて呻いている瑞希にクリスは申し訳なさそうな顔をして尋ねてきた。 これが大丈夫そうに見えるんならクリスはそうとう目が悪い。痛い。とにかく痛い。鼻頭が折れたんじゃないかと思うくらいに痛い。 クリスの力一杯の攻撃を受け、赤くなっているだろう鼻を摩りながら瑞希は恨みがましい目でクリスを睨んだ。
「悪い……何でミズキはここに来たんだ?隊長はどうしたんだ?」
来た。予想通りの質問だ。瑞希は平静を装い、用意しておいた言葉を口にする。 少し視線を落として深刻そうな雰囲気を出せば、クリスは信じたらしい。 同僚に嘘をつくのは気が引けた。つきんと罪悪感が胸のどこかを突き刺した。
「にしても……あいつらは一体何なんだ?奴らの一人にケネスがやられていた……」
「!……ケネスが……」
エドワード、ジョセフに続き、ケネスまで……。既に三人も被害が出ているなんて、ショックだ。 下手をすればブラボーの全員が死――いや、今は考えないでおこう。 嫌な考えを振り払うように瑞希は顔を上げクリスを見る。
「この館を調査しよう。ここは何かある」
「……あぁ」
何も知らぬクリスは簡単にそう言った。この館がいかに複雑で、面倒だと知らないから言える言葉だ。 瑞希は内心でため息をつきながらも、クリスに同意した。
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