バスタブからこんにちは:02
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バスタブの中にあった銀色の古びた鍵をクリスが見つけた。 腐敗した肉の下敷きになっているそれをどちらが取るかでひと悶着あったが、結局クリスが取った。 クリスが恨めしげに此方を見てきたが、知るか、じゃんけんで負けたのが悪い。
さらに奥へと進んで、階段を登った。 その途中、壊れた扉と石詰めになった部屋を見つけた。 正確には部屋だったもの、と言うべきか。トラップが作動したらしい。恐らくは天井が下りてくるタイプの物だろう。 扉が壊されていたから恐らく中にいた人物は脱出できたんだと思う。よもやサンドイッチのハムになっているなんて事はない、筈だ。 ジルかバリーか、そのどちらかが。どちらにせよ、相当怖い思いをしたに違いない。
階段を上った先にいたゾンビに先行していたクリスがヘッドショットを決めた。 危険がなくなったところで、瑞希は廊下を見回す。人が二人並ぶと窮屈になりそうな細い通路だ。左右に道が伸びておりコの字型になっている。
「どっちに行く?」
「とりあえず左で」
尋ねられたため、瑞希は適当に答える。瑞希の投げやりなそれにも気にせず、クリスは頷き左に進んでいく。 館の端のようで窓が取り付けられている。その正面には扉があり、ドアノブには鎧のマークが掘り込まれている。 手持ちの鍵では開けられないようだ。念のためにクリスがノブを捻ったががちゃがちゃと音を立てただけだった。
角を曲がり、突き当たりの扉を開ける。 暖炉のある、他の部屋と比べると少々手狭な部屋だ。扉近くに電気はつけられているものの部屋は暗い。 視界が悪く何があるか判然としない。目を凝らしながら、瑞希は薄暗いそこを確認する。 鉢植えにアークレイ地方ではよく見かける種のハーブが植えられている。 ラクーンではよく栽培されているため特に珍しくもないが、これは傷によく効くのだ。 二十センチほどに育ったそれを根元から千切り採り、瑞希はそれをハンカチに包みベストのポケットへ仕舞った。
不意にぱあっと視界が明るくなった。 暖炉に火がつけられている。揺らめく光源が薄暗かった室内を照らす。 はっきりした視界で再度辺りを見回した。特に変わったものはない。 ふかふかとした手触りの良いソファが二脚に細々とした雑貨が暖炉の上などに置かれているだけだ。
「兜のマーク、か……どうやら行き止まりだな」
扉を見ていたクリスが振り返って言う。適当に言ったが、どうやらこっちは外れだったらしい。 まあいずれにせよ、調べなければいけないのだから、地理が少し理解できただけでよしとしよう。
来た道を引き返し今度は右に向かう。
「ノブが無いんだけど?」
正面の扉には肝心のノブが無い。強力な力でもがれたのかノブの部分に折れた痕が残っている。 瑞希はその扉を力いっぱい押してみたが、ビクともしない。どんどんと叩いても無理だった。
「仕方ない、向こうにも扉があるから行くぞ」
諦めて突き当たりの剣のマークが刻まれた扉に向かった。
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