シェバと。:03
それから色んな事をお話した。 大半はシェバが質問をしてきて俺がそれに答えるという感じではあったが、楽しかった。 すっかり日も傾き始め、リフレッシュルームからは人の姿が消え始めている。
そろそろお開きにしようと提案し立ち上がった。
「何だか夢見たい」
椅子を引きながら、窓の外を見つめながらシェバが呟いた。 どこか儚げな雰囲気のシェバに俺は口を閉ざし、シェバと同じ方向を見る。 夕暮れのオレンジ色が窓から差込み、建物全てが染まっていた。
「でも夢じゃないのね……だってナツキに触れるもの」
静かに伸ばされた手のひらが俺の右手に遠慮がちに触れた。機械仕掛けのそれにシェバは表情を僅かに陰らせる。 俺は何も言わずに伸ばされた手のひらを握った。右手だから体温は分からない。けれどきっと、とても温かいのだろう。
「ナツキ……また、ここに来てくれるかしら?」
「勿論!すぐには無理かも知れないけれど……また会いに来るよ」
いつの間にか俺はシェバの身長を通り越していたらしい。幾らか下にあるシェバの瞳を見て気付いた。 どんな時でも強気なシェバが今ばかりはごく普通の女性に見えた。
「約束よ」
「うん、約束!」
にっと笑って俺はとんと胸を叩いて頷く。 そんな俺にシェバも釣られる様に微笑んだ。
暖かな黄昏が菜月達を包んでいた。
-fin-
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