シェバと。:02
所変わって、BSAA西部アフリカ支部のリフレッシュルーム。 明るく開放的な雰囲気のそこの隅のテーブルに菜月とシェバはいた。 紙コップ自販機で購入したミルクティーを片手に菜月は座り心地のいい椅子に深く腰掛ける。
「ねぇ、レッドフィールドってクリスと同じよね。どういう事?」
ずっと気になっていたらしい。席に着くなり、シェバが尋ねてきた。 シェバの食いつきに菜月は苦笑し、簡潔に説明をする。
「早い話、養子になったんだよね」
「養子……それで……」
納得したように、小さくシェバが頷く。 そうなんだよね、と相槌を打ってから俺は一口ミルクティーを飲んだ。うむ、甘くて美味しい。 へにゃ、と顔を緩ませるとシェバが小さく笑った。
「変わらないわね、ナツキは……」
頬杖をつきながら、シェバはどこか懐かしげに俺の顔を見つめる。 その視線がくすぐったくて、俺はどぎまぎして視線を反らす。
「髪と身長が少し伸びたくらいじゃない?」
「そう、かな……」
がしがしと後頭部を掻くと伸びた髪がぴょこぴょこと揺れた。 菜月自身にあまり実感はないが四年も経ったのだ。変わっていない方が可笑しいのかもしれない。 菜月はともかく、シェバは女性としての柔らかさや丸み、といったものが出てきているような気がする。 前よりか雰囲気は落ち着いたように見える。
「……誉め言葉として受け取っておくわ」
「……口に出してない、よね……俺……」
読心術はどうやら健在のようで、やっぱりシェバは相変わらずだ。ちっとも変わっちゃいない。 逆にそれが安心できて、俺は噴出すように笑みを浮かべた。 それで……とシェバはミルクたっぷりのコーヒーを少し飲んでから口を開いた。
「その腕は?」
金属製の腕にぐっさりと突き刺さるシェバの視線に俺はにっこりと笑った。
「名誉の負傷、って感じ、かな」
「何それ。うっかり転んで千切れたんじゃなくって?」
「いや……俺、そんなどじっ子属性ないよ」
うっかり転んで腕を肩から千切るなんて幾らなんでも俺だってしない。というか、名誉の負傷が転んで千切れるってどんなだ。 確かにへまする事は多いかもしれないけど……酷い言いようだ。
空になった紙コップをテーブルの上に置きながら、菜月はがっくり項垂れた。
「冗談に決まってるでしょ」
「あ、さいですか……」
真に受けないで、とちょっぴり怒った顔で言われてしまった。
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